ルーキーイヤーで得た数々の経験と悔しさを新シーズンに活かし、チームの勝ちに繋げる!
6月27日に横浜ビー・コルセアーズとの契約更新締結が発表され、来季もビーコルで闘うことになった田渡 凌。ルーキーイヤーだった2017-18シーズンを闘い終えた田渡に話を聞くことが出来た。オフのこと、ルーキーイヤーのこと、兄修斗との兄弟対決のことなどをじっくりと聞いた。
オフはアメリカで、新たにチームのスキルトレーナーとなったフェス・アービン氏の元で新シーズンを闘う土台作りに励んでいる田渡。インタビューは渡米前だったが、まずオフの過ごし方について聞いた。
「主に体作りです。いろいろと改造したいところもあってやっています。バスケットボールでは、まだまだ成長しないといけない部分が沢山あるので練習の毎日です」
このインタビューの3日前には自動車免許も取った。ストイックな鍛錬の一方でリフレッシュも忘れない。
「バッチリ取れました!でもまだ運転していません(苦笑)。保険とかがまだなんですよ」
免許を取って、最初にどこに行きたいかと聞くと、ちょっと迷った田渡。
「どこに行きたいかなぁ。西麻布にトレーニングやヨガに行くので、それを車で行きたいですね。電車や人混みは疲れるんです」
意外な答えだった。遠出はしないのだろうか。
「遠出ですか?今のところ特にはないですね。都心で車に乗ってカッコつけたいぐらいです(笑)。首都高とか。僕は都会っ子なんで(笑)」
田渡はバスケの名門京北高等学校を卒業後、アメリカNCAA2部のドミニカン大学での武者修行を経てビーコルに入団。2017-18シーズンは、田渡にとってプロキャリアをスタートさせた最初のシーズンだった。ルーキーイヤーの感想を聞くと田渡は即座にこう強く答えた。
「個人としても、チームとしても全く満足出来なかったシーズンでした。新シーズンは、もっともっと頑張らないといけない」
反省ばかりだったという2017-18シーズン。それでは、田渡がプロとして、ルーキーイヤーで出来た部分、出来なかった部分は?と聞くと田渡は少し悩んでからこう答えた。
「うーん、この質問は難しいな。出来る部分は沢山ありましたが、大事なのはそれらをシーズン通してどれだけコンスタントに出せるかということなんです。もちろん、これが出来た出来なかったというはありますが、常に同じパフォーマンスをすることが出来ませんでした」
確かに波はあった。田渡のルーキーイヤーはレギュラーシーズンで58試合に出場して11回先発。挙げた得点は372点、平均得点は6.4点だった(残留プレーオフを除く)。プロデビューとなった開幕節の滋賀戦ではGAME1で7得点、GAME2で8得点を挙げ、10月9日のアウェイ北海道戦では、自身最多となる23得点をいきなり挙げて鮮烈なデビューを飾った。
しかし以降は3度の14得点を最多として、この数字を上回ることはなかった。二桁得点は14回(残留プレーオフを含む)を記録したが、一方で一桁台も多くムラがあった。「同じパフォーマンスをコンスタントに出すことが大事」田渡のこの言葉には、これらのことが集約されている。しかし日本バスケ界期待のサラブレッドがプロ1年目で58試合に出場し、その可能性を大きく示したことは確かだ。
シーズン前とルーキーイヤーを闘い終えた今とでは、当初持っていたイメージのギャップは大きいという。
「予想以上に厳しい部分がありました。これは個人的にも、チームが勝てなかったことも含めてです。自分が思っていたよりも難しかった」
田渡にとって、プロのキャリアをスタートさせたビーコルはどういったチームなのだろうか。
「ベテランの先輩たちも多くいらして、その中で沢山のことを学ばせて頂きました。その一方で葛藤もありました。シーズンを通して、いろいろと試行錯誤をしながら乗り切った1年というのは今までになかったことでした。『苦労したぶんだけ人は成長出来る』僕はそう信じているので、そういった意味でもこのチームに入ることが出来て良かったと思っています」
田渡がビーコルでプレーしたプロ最初の1年。ここで得た貴重な経験は2年目のシーズンに向けた大きな糧になるのではと聞くと、田渡は決意の眼差しでこう答えた。
「そうだと思います。それを新シーズンで活かさないと何も意味がなかったことになってしまう。本当に新シーズン次第ですね」
田渡といえば、三遠でプレーする兄田渡修人との兄弟対決だ。ルーキーイヤーでは6度対戦。特に最後の対戦となった5月2日豊橋での試合ではこれまでで最も激しいマッチアップを繰り広げ、弟凌が兄を上回る場面もあった。
「お兄ちゃんは、横浜とやる時は調子が良いんです。僕も試合に出たら思いっきりアタックして行こうと思っていました。でもチームの勝ちに繋がらなかった。だから僕の負けです」
「チームが勝たないとダメなんです。たとえ兄弟対決を制したとしても、チームが負けたら意味がない。僕はそう思っています」
凌が兄を制し、チームが勝った試合がある。それは田渡にとっても印象に残った試合になったという。
「最初の三遠戦(11月4日横浜国際プールでのGAME1)で、僕が最後にお兄ちゃんからスティールして、お兄ちゃんがアンスポして退場。そのあとに僕がフリースローを決めてチームが勝った試合。あの試合は僕の中で印象に残っています」
11月4日横浜ビー・コルセアーズ対三遠ネオフェニックスGAME1(横浜国際プール)
プロになって初めての兄弟対決で凌は、2Qの3分で兄修人にターンオーバーを奪われて転倒。兄にシュートを決められていた。しかし4Q、最後の最後でやり返してみせる。 ビーコル1点リードの4Q残り12秒、川村が外したフリースローをリバウンドした三遠カルティエ・マーティンが修人にパス。凌はそのボールをすかさず奪いスティールすると、それを追った修人がアンスポーツマンライク・ファウルを取られてファウルアウト。凌はフリースロー2本を決めてリードを広げ、チームの勝利を決定付けた。
「あの時は、本当にうれしかったです。それにあの試合で僕は足を怪我してしまって、プレータイムが限られていました。だから最後にああいう形で終われたというのも印象に残っている理由です」
では自身のプレーではどうだっただろう。印象に残っているプレーは負けた試合が多かったそうだ。
「勝てなかったけど、名古屋D戦ですね」
自己最多23得点を挙げた北海道戦を予想していたが、そうではなかった。名古屋D戦はあと一歩のところで敗戦した試合が多かった。それだけに田渡の悔しさも大きいが、個人としても、チームとしても、あの悔敗の中で得たものは大きかったそうだ。
名古屋D戦で田渡は相性の良さをみせていた。1月28日ホームでのGAME2で10得点。3月18日アウェイでのGAME2で14得点。4月27日と28日のレギュラーシーズンホーム最終節ではGAME1で14得点、GAME2で12得点を挙げている。
「勝利には繋がりませんでしたが、良いバスケは出来ていました。あの時のバスケで、チームが勝ち切ることが出来ればと思っています」
プロになって、そしてビーコルでの2シーズン目となる2018-19シーズンへの意気込みを聞いた。
「昨シーズンで学んだことが沢山あります。自分たちが何故勝てなかったのかということも明確になりました。個人のパフォーマンスとチームとしてのダメだった部分、数々の反省を克服していく。そして、これらを勝ちに繋げていく。頑張るだけです!」
最後に新シーズンも共に闘うビーコルブースターへメッセージを送ってくれた。
「昨シーズンは、シーズンを通して沢山のブースト、応援をありがとうございました。感謝しています。いつも、本当に勝てない試合が多くて、それでも沢山のビーコルブースターの皆さんが来てくれて、正直申し訳ない気持ちに何度もなりました。その度に頑張らないといけないという気持ちになっていました。ビーコルブースターは日本一です。そして今度はチームも日本一になれるように頑張って行きます!」
プロ2年目となる2018-19シーズンもビーコルで闘うこと選んだ田渡 凌。期待の新シーズン、ルーキーイヤーで得た貴重な数々の経験、そして数々の悔しさをチームの勝利のために活かす覚悟だ。持ち前のスピードと泥臭いバスケで海賊2シーズン目のコートを駆ける。さらなる進化を続ける田渡 凌から目が離せない。
【記事・インタビュー・写真/おおかめともき】
『2018-19シーズン 選手契約締結(継続)のお知らせ』
https://b-corsairs.com/news/team_20180627-3/