チームのディフェンス難が続く中で、エース川村卓也が想うこととは。

「コーチの信頼を勝ち取るためにマンツーマンで闘えるチームを早急に作っていく」

チームを優勝出来るチームへと再生している最中のウィスマンビーコル。ゼロからリビルドしているだけに、なかなか勝てない状況が続く。シーズンが始まる前は、勝てるチームになるための産みの苦しみ、我慢の時が多くなることを覚悟していたはずだが、負けがかさんでいくと、ブースターにとってはフラストレーションも溜まってくる。それは、ブースターの想いを背負って闘っている選手とて同じことだ。ビーコルのエース川村卓也は、今季のチーム最多90得点を挙げながらも7点差で敗れた三遠戦後に、言葉を絞り出すようにしてその想いを代弁した。

「チームとして、やりたいこと、向かいたい方向性が、今は明確ではありません。これがチームのリズムを生めない理由のひとつではないかと思います」

横浜ビー・コルセアーズ#1川村卓也。チームのディフェンス難が続く中で、エースは言葉を絞り出すようにしてその心中を語った


ディフェンスにプライドを持つトーマス・ウィスマンHCは、いま指揮を執るこのチームが抱えている深刻なディフェンス難を嘆くことが多くなったが、名将はこの対応策として、ゾーンディフェンスを多く用いるようになった。

11月7日横浜国際プールでのホーム三遠戦では、高島一貴を先発させてディフェンシブなスターティング5を起用。ディフェンスはマンツーマンでスタートさせたが、三遠にイージーシュートを多く許してしまい1Qで26点、2Qでは昨シーズンまでの僚友ウィリアム・マクドナルドに14得点を入れられるなどして25点を失い、2Q終盤以降ではゾーンディフェンスが増えていった。川村は、もどかしそうにこう語る。

「やはりゾーンディフェンスというのは、どうしても人につかないでエリアを守ることになります。そのぶん、自分たちが予想しないスペースが出来ることが多くなります。コーチから見れば、僕ら選手のマンツーマンディフェンスが力不足だから、ゾーンを使っているんだと思います。コーチの理想に近付けていないことは、選手として非常に恥ずかしい思いでいっぱいです」

ここまでの敗因はディフェンス難によるものがほとんど。チームの総失点数はB1最下位であり、エースもこれを悩ましく思っている。

「相手のシュート確率が5割以上、60%を超えてしまっている試合がここ数試合続いているのを考えると、相手によりイージーにディフェンスを崩されて、イージーレイアップを多く許してしまっています。まずはここを改善しないことには僕らのディフェンスリバウンドの数も増えず、相手のスコアを抑えることも出来ません。ダメなところをあげたらキリがないぐらいに、最近の試合は個人的にもいろいろと悩むことが多いというのが、正直なところです」

川村の話を聞いているうちに、選手たちが持っているマンツーマンディフェンスへのプライドを感じた。それだけにマンツーマンへの自信が揺らいできているのははないか。

「試合中のコートでは、1秒で起きていることが様変わりします。ベンチの指示がゾーンディフェンスなので、選手は指示に従います。その中でマンツーマンで守った方が上手くいくのではないかと個々の選手が疑問を抱くこともありますが、これは決して反発的な思いではないです」

そう、これは決して批判ではない。当事者である選手が思うごく自然な疑問だし、選手としてのプライドも傷つけられている。

「ウィル(ウィリアム・マクドナルド)には、今日11本中11本で100%シュートを決められました。一刻も早く、コーチの信頼を勝ち取るために、マンツーマンで闘えるチームを早急に作っていく必要がある。選手としてそう思っています」

「ネガティブなことばかり言っても仕方がありません。マンツーマンとゾーンを併用している時、チェンジングであったり、ゾーンと見せかけてマンツーマンを仕掛けたり、もしくはこの逆だったり。こういったことで相手のリズムが狂った時には、僕らのオールコートのアーリーオフェンス、速い展開のバスケットが出来ることに繋がってきています。これを自分たちで引き出すことが出来れば、相手にやられているイージーなバスケットを、僕らが出来ることに繋がっていくと思います

つまり、ヘッドコーチの指示がなくとも、コートの上で選手たち自身が考えてゲームをおこなっていくということだ。優勝出来る強いチームはこれが出来ている。ビーコルはそれを目指さないといけない。

連勝したホーム滋賀2連戦では、ゾーンとマンツーマンを織り交ぜたディフェンスが上手くいったこともあり、ディフェンスは良い方向に向かうのではないかと思われたが、ここに来てまたディフェンスが崩壊しているのは何故か。川村はこう捉えている。

「僕らがゾーンを多用していることで、相手はゾーンをやってくることが分かりますし、準備も出来ます。土日の試合だと、だいたいのチームが月曜を休んで、火曜から練習をしていると思いますが、火水木金と4日間準備する時間があれば、相手もプロ組織ですから、ゾーン対策の準備は出来ると思います」

実際、試合後に「横浜がゾーンをやってくることは分かっていた」と明かしたヘッドコーチも少なくない。

「それを上回る、僕らの熱量が必要です。ただ、ゾーンが上手くいっている時間帯もあって、悪いだけではありません。ゾーンの悪いところばかりをフォーカスするのではなくて、どんな時に上手くいっているのかをフォーカスするんです。三遠との試合でいえば、どうやって10点あった点差を3点差にまで持っていくことが出来たのかをチームとして振り返る。どうしてもネガティブになりそうな時期を覆すにために、ポジティブで良い点もしっかりと話し合うようにする。そうすれば、自分たちの良さを再認識して、コートで出そうとするエナジーに繋がると思うんです」

「まだまだ試合は残っているので、このまま同じ状況が続いてはいけない。何より、いつも負けている内容が同じです。それを観に来てくれているブースターの皆さんに申し訳ないですし、やはり、恥ずかしい気持ちでいっぱいです」

ポジティブなことでいえば、三遠戦でチームが今季ここまで最多の90得点を挙げたことだ。

「90点取ったことは、チームの成長として捉えるべきだと思います。オフェンス面でいえば、ジャボン(ジャボン・マックレア)が32点取って、インサイドでフィニッシュしてくれる力をみせてくれました。それを安定して引き出さないといけません」

三遠戦で32得点を挙げたジャボン・マックレア(左)に声を掛ける川村


「バスケットボールは、インサイドが安定することによって、ディフェンスが小さくなって、アウトサイドのシュートが有効的になってくるシチュエーションがあります。32点取ったジャボンのパフォーマンスは素晴らしいと思いますし、チームの総合得点が90得点に伸びた大きな要因だと思います。僕がもう少し、3Pも5割、2Pも5割、シュートをしっかりと決めることが出来れば、イージーに100点を超える点数になっていたと思います」

「点数を取られたら、取り返さないと追いつくことは出来ません。単純なことをしっかりとコートの上で表現することが出来れば、対等でゲームは進んでいきます」

三遠戦でレイアップを決める#1川村卓也


「チームとして90点を取ったことは、ポジティブなことのひとつです。あとは(シュートを)決められなかった時に如何にして相手を止めるかです。
(三遠戦での最終スコア)7点の差の中で、これがあと3回起きれば良いんです。単純に考えれば(4Qのリバウンドでは11対7で)4回、僕らのほうが勝っていました。こういった何回も起こるシチュエーションのひとつを大切に闘っていくことを学べば、オフェンスに関していえば、きっと継続していくことが出来ると思います」

苦しい状況が続くチームにあって、川村はエースの気概をむき出しにしてコートで奮闘し続けている。三遠戦の3Qで川村は、相手ディフェンスを受けてその場に転倒。痛みから苦悶の表情を浮かべたが「交代しないよ!交代しないよ!」と訴えてプレーを続行した。その直後だった。川村は痛みを堪えながら、執念のダブルクラッチで2Pシュートを沈めた。

「代えて欲しくないという気持ちが、あの言葉になったんだと思います。選手としては、いつでもコートに立っていたいという思いがどの選手にもあると思います。相手がハードにプレーしてきた中で起こったアクシデントでベンチに下がるというのは、自分にとっては不幸以外の何ものでもありません。調子が悪いであるとか、ミスが続いているとかで交代させられるのは分かりますが、そうでないのであれば1分でも多くコートに出て自分を表現したい。常にそう思っています。ああいったアクシデントがありながらも、頭は冷静にしてパフォーマンスに繋げていくことが出来れば、チームのためになると思っています」

ここからの意気込みを川村はこう語る。

「チームの中でネガティブなワードが多く、チームとして組織として自信を失っている部分が多くなっています。練習からもっともっとアグレッシブになって、チーム内の競争を激化させていく。チームはそうやって成長していきます」

「ここまでのことを、映像でしっかりと見て振り返り、練習ではネガティブなことを、まずはポジティブなことに変えれるようにしないといけません。話し合うこともそうだし、コートでパフォーマンスすることもそう。そういった積み重ねがチームの成長に繋がります」

「今は8チームが団子状態だと思っています。他のチームも必死です。その中で出遅れないためにも、顔を上げてやるしかない」

「それをブースターに見てもらって、僕たちが顔を上げて激しくプレーして、勝利に向かっていく姿勢を見せる。僕たちが勝つことが、ブースターさんたちが喜んでくれるシチュエーションだと思います。いくら負け続けても、こうやって会場に来てくれるブースターさんたちに甘えず、皆さんに見られていることを常に意識して、プロとしてやるべきことをコートの上で表現したいと思います」

この言葉は、大阪戦への意気込みを語ったものだったが、ここからの巻き返しに向けた川村の覚悟と決意の言葉でもある。いま、川村をはじめとした選手たち、ウィスマンHC、チームスタッフ、そしてビーコルブースターが持っている苦しさは、決して無意味なものではない。強くなるため、優勝出来るチームになるための避けることが出来ない産みの苦しみなのだ。今のこの過程を信じよう。必ずその日は来る。

【インタビュー・写真・記事/おおかめともき】

川村卓也 Twitter
https://twitter.com/takuyakawamura1

川村卓也 インスタグラム
https://www.instagram.com/kwmrtky1/?hl=ja

 

Written by geki_ookame