ビーコル 2019-20シーズンパートナー訪問『株式会社AOKI』(前編)


地域密着でビーコルと合致。AOKI諏訪健治社長に聞く

横浜ビー・コルセアーズのオフィシャルスポンサーを務める株式会社AOKI。“メンズ・レディーススーツ専門店のAOKI”として有名な同社は、ビーコルのホームタウン都筑区に本社社屋を構える。ビーコルにはオフィシャルスーツも提供して、その協賛活動に力を入れている。今回、AOKI本社と横浜港北総本店を訪問して取材。そのレポートを2回に分けてお届けする。前編では、諏訪健治社長にお話を聞く。

昨年12月、横浜国際プールでのホームA東京戦でおこなわれたAOKIの冠試合『AOKI SPECIAL GAME DAY』【写真提供:©︎B-CORSAIRS/T.Osawa】

長野の洋服屋としてスタート

株式会社AOKIでは、全国500店舗を超える『AOKI』と120店舗強の『ORIHICA』の2つの専門店を展開。『AOKI』はメンズ&レディースのスーツ&フォーマルを主軸としながら、関連するワイシャツやネクタイ、シューズも取り扱っている。

「『AOKI』はビジネスウェアを中心とした洋服の専門店ですが、最近では、ビジネスウェアも多岐にわたってきておりますので、ジャケットとスラックスの新しいBIZスタイルであったり、女性ではキャリア向けの洋服や、オフィスカジュアルも展開しております」(諏訪社長)

お話を伺った株式会社AOKI諏訪健治社長


『ORIHICA』は、若年層をターゲットにして主にショッピングセンターを中心に展開。『AOKI』とは違った商品構成で、“ビジカジ”といったファッション性を持たせたカジュアルな商品を扱っている。

株式会社AOKIは、1958年に長野県更級郡篠ノ井町(現・長野市)で『洋服の青木』として創業して今年で62年目になる。街の洋服屋からスタートし、今では『AOKI』と『ORIHICA』で全国600店舗ほどの大型チェーン展開が出来るまでに発展した。

「創業当時はまだオリジナル商品を作っていなくて、通常の既成品を販売する“洋服屋”でした。1971年にオリジナル商品の生産を始めて、そこから50年近くものづくりを続けていることになります」(諏訪社長)

AOKI本社社屋にある横浜港北総本店の紳士服コーナーにあるディスプレイ。その重厚なイメージは堅実なものづくりを彷彿とさせる

ものづくりには絶対の自信。AOKIだからこそ出来る新しいビジネスウェアの提案

AOKIの商品は求めやすい価格でありながらも、“糸から作るAOKI”として縫製にも優れ、そのクォリティには定評がある。

「ものづくりには絶対の自信と誇りを持っております。60年間にわたって続けているビジネスウェア提供でお客様から生のお声を頂いてきていますから、職場で着るビジネスウェアに関しても自信があります」

「ビジネスウェアも、今は時代が変わってスーツでなくても仕事が出来る時代になってきています。大手の銀行さんですらスーツを着なくてもいい“服装の自由化”が広がってきているんです。その中で、お客様にはどんな服装をしたらいいか悩んでおられる方も多くいらっしゃいます。ジャケットとズボンでも良いんだけど、なかなか自分に似合うものが分からなくて、選んでもらえませんかといったご要望も多いんです」

「AOKIでも、ビジネススーツで培ったものづくりとお客様の声を活かした“新ビズスタイル”といった新しいビジネスウェア、ノーネクタイであったり、Tシャツとジャケット、時にはスニーカーと合わせるような新しいビジネススタイルをご提案させて頂いております。カジュアルなビジネススタイル“ニュービズスタイル”は、今のお勧め商品です」

AOKIではカジュアルさを取り入れた新しいビジネススタイルを提案している

店頭での接客にこだわり、客との接点に力を入れる。

AOKIが、もうひとつ力を入れているのが店頭での接客だ。AOKIの店舗にいけば、たとえスーツやファッションに詳しくなくても、客のニーズにあったベストな一着を見つけることが出来るようになっている。

「AOKIには全部で5000人以上のスタッフがいるのですが、スタイリスト制度といって、お客様への適切なスタイリングをおこなうための認定試験を導入しております。現時点で3000人ほどのスタッフがこの認定を合格して“AOKIカスタマーズスタイリスト”としてお客様が持つ個々のご要望にお応えしております。業種によっての服装であったり、体型のお悩みといった皆さまが持つ服装のお悩み、ひとつひとつに答えられることがAOKIの強みです」

AOKIのスーツは、きちんと装える、きちんと見えることを全体のコンセプトとし、機能性、着心地、手入れのしやすさを追求している。デザインも、なで肩が多い日本人の体型に合ったスーツになっており、手入れのしやすさにおいては、洗えるスーツを日本で初めて発売している。スーツで使う生地では重厚感のあるウール素材も扱うが、ニーズの多い洗える生地、ストレッチ性がある生地も積極的に取り入れている。

着心地を追求したAOKIのオーダースーツ。日本人の体型に合ったスーツになっているのも特徴。老舗ならではの経験が存分に生かされている。

ビーコルのホームタウン都筑に本社を構える

AOKIは1986年に当時はまだ緑区だった都筑区に本社を移転させ、本社社屋1階と2階に当時首都圏最大級だった横浜港北総本店をオープンさせた。

「長野から創業したAOKIですが、たくさんのお客様にサービスを提供したいと考え、全国への出店をスタートさせました。その中で、マーケットボリュームが大きい関東での旗艦店の出店が必要になり、1980年に関東第1号店を海老名に出し、86年に横浜港北総本店を都筑区(当時は緑区)にオープンさせました。当時はいわゆる紳士服専門店ブームの真っ只中でして、オープンした当時には本店近くにある港北インターのほうまで長い行列が出来て、それが1ヶ月ほど続いたと聞いております」

都筑区に本社を構え、横浜港北総本店を出した理由を諏訪社長はこのように話す。

「以前、紳士服店といえば百貨店や商店街といった街の中心地域にあったと思います。我々はそれを敢えておこなわず郊外を中心に店を出していきました。当時はモータリゼーションの時代で、車で買い物にいく、駅前ではなく、マイカーで洋服を買いにいく時代でした。加えて、郊外のほうが土地代も安いわけです。出店コストで浮いたお金を商品の価格に反映させて、よりお値打ちな商品を提供出来たのです」

「都筑区は当時、まだ緑区でしたが、横浜の中心ではないものの、人口がどんどん増えてニュータウン化が進んでいましたし、これから横浜の新しい拠点となり、新しい住民、新しいお客様が住んでいって街が活性化していくことを見越して、ここに本社を建てました。今では都筑区のランドマークとして認知して頂いております。我々が持っていた事業モデルと、どんどん発展を続けている都筑区のビジョンが合致した結果だと思っています」

AOKI本社と横浜港北総本店は、横浜市営地下鉄グリーンライン都筑ふれあいの丘駅近くにある。都筑への出店こそが、安価で高品質の商品を提供出来る要因になっていた。まさに先見の明といっていいだろう。

「都筑区の地域の皆さまともコミュニケーションを取らせて頂いて、いろいろとご支援を頂いています」

都筑区にあるAOKI本社社屋。都筑ふれあいの丘駅近くに位置し、都筑のランドマーク的存在になっている【写真提供:©株式会社AOKI】

地域密着で合致したビーコルのオフィシャルスポンサーに

AOKIがビーコルのオフィシャルスポンサーを務めるようになったのは、Bリーグになった2016-17シーズンからで今季で4シーズン目になる。その理由はビーコルも掲げる地域密着で理念が合致したからだった。

「ビーコルさんは我々と同じ都筑区を本拠地としていましたし、Bリーグが始まってこれからバスケットボールが益々盛り上がっていくだろうと考えておりました。我が社が掲げる理念のひとつ公共性の追求の一環として、ビーコルさんのオフィシャルスポンサーをすることは、ビジネス以外でも世の中、地域のために間違えなくお役に立てる。そう確信して始めさせて頂きました」

「では、オフィシャルスポンサーとして我々に何が出来るのかを考えた時に、我々が自信を持っているスーツづくりを活かそうと考え、選手、チームスタッフの皆さんが着るオフィシャルスーツを提供させて頂くことになったわけです」

株式会社AOKIは創業時より、社会性、公益性、公共性、これら3つの理念を掲げており、ビーコル以外でもJリーグ川崎フロンターレなどにもオフィシャルスーツを提供している。これらオフィシャルスーツの提供をはじめとした協賛活動は、理念の中のひとつ公共性の一環だという。

「ビーコルさんをはじめとして、スポーツチームへの協賛に力を入れています。AOKIの強みである50年以上にわたって続けている確かなものづくりと、専門としているビジネスウェアのノウハウを活かして、着ていて疲れない、手入れがしやすい機能性を重視した商品を開発して、オフィシャルウェアの部分でサポートをさせて頂いております」

昨年12月におこなわれたAOKIワンデースポンサーゲームで挨拶する諏訪社長

AOKIのスーツづくりのノウハウが存分に投入された機能性とファッション性に富んだオフィシャルスーツ

AOKIはこれまで、ビーコルに4着のオフィシャルスーツを提供してきており、ここ数シーズンでは選手たちの好みや意見もデザインに反映されるようになっている。

「オフィシャルスーツで重視していることは、やはり機能性です。ストレッチ性に優れて、着ていてストレスを感じず、動きやすい。なおかつ、ビジネスウェアとして“きちんと感のある”スーツ、シャツ、ネクタイを提供させて頂いています」

「選手たちは普段、ユニフォームやジャージ姿ばかりが見られていますが、スーツ姿というのはあまり見られていません。スーツを着た姿は選手たちの新たな一面なんですね。オフィシャルスーツを制作する中で、選手らしさを損なわず、スポーツマンらしく、且つ意外性が見えるようなスーツって何だろうと考えたんです」

「今季のスーツでは、爽やかなブルーをイメージしています。ブルーは横浜のカラーであり、ビーコルのチームカラーでもあります。ただ、ブルーがあまり濃すぎてしまうとビジネスマン的というかサラリーマンぽくなってしまいますので、やや明るいブルーをセレクトさせて頂きました。そして、それに合わせるネクタイは、真摯さ、スポーツマンらしい誠実さを出せるセレクションになっています。あとは、何よりも、着たくなるスーツだということです。いつものスーツにはないかっこよさ、ちょっとお洒落、ちょっと爽やかといったところを狙っています」

AOKIが提供した今季のビーコルオフィシャルスーツ。手にしているのはAOKI広報室の比本佳奈さん


「選手の皆さんともコミュニケーションを取っています。選手たちは体型が千差万別なんですね。移動時でも着たいとのことでしたので、伸縮性が良く、軽くて、手入れがしやすい生地をセレクトするようにしています。選手の皆さんからもご要望を頂いて、今季のスーツでは田渡キャプテンたちがセレクトしてくれています。私共もスーツを通じて、選手の皆さんと交流が図れていますし、選手の皆さんに喜んで頂いて、AOKIのスーツを着て良いモチベーションで試合に臨んで頂けることは私共にとって非常にうれしいことです」

「今後のオフィシャルスーツ作りでは、ビーコルを応援している都筑の皆さんや、ブースターの皆さんに、スーツやネクタイを選んでいただくのも良いのではと思っています。選手だけでなく、地域の皆さん、ファンの皆さんも一緒になって選手の姿を作りあげていく。そういった新たな応援の形、関係性が作れたら良いねと担当者と話しているんです」

インタビューでも自ら、提供したビーコルネクタイを着用していた諏訪社長


AOKIにとって、オフィシャルスーツをビーコルに提供することは自社のスーツをPRする機会となる。残念ながら、選手たちは、試合中のコートでスーツを着ることはないが、ヘッドコーチ、アシスタントコーチをはじめとしたチームスタッフ、会場のフロントスタッフが着用して来場者の目に止まる。ビーコルがAOKIのスーツを着たモデルになっているというわけだ。

「本当にうれしいことです。他チームを見ると試合中、スーツを着ていないチームもあるんですけど、ビーコルのヘッドコーチとチームスタッフたちは着ているんですよ。これがうれしくてしょうがないんです(笑)。コートの上でヘッドコーチが、AOKIのスーツをビシッと決めて、指揮を執っている姿を見るとスーツ屋冥利につきる思いです」

AOKIのオフィシャルスーツをまとい、ベンチから戦況を見守る福田将吾HCと加藤翔鷹AC【写真提供:©︎B-CORSAIRS/T.Osawa】

スポーツ協賛の経験が活きて実現した2020年東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルスーツ提供

AOKIは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会日本代表選手団公式服装(開会式用・式典用)の作製とテクニカルオフィシャルユニフォーム(フォーマルウェアのみ)の提供が決まっている。これに先駆けて、裏地に東京2020ゲームズシグネチャーが入ったスーツなどの東京2020オリンピック・パラリンピック公式ライセンス商品が販売されている。

「公共性の一環として、これまでにも様々なスポーツチームにスーツを提供して来ましたが、今回東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式服装を担当させて頂くことになって、AOKIが60年間やってきた公共性、ビジネスを通じて世の中のためにお役に立てることが出来るようになりました。日本の最大事業といっていい東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会をサポート出来ることは、本当に光栄でうれしい限りです」

AOKIが東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のライセンスを受けて展開している東京2020オリンピックエンブレムストレッチウォッシャブルスーツ


諏訪社長は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への公式服装提供は、AOKIがこれまでにビーコルをはじめ、様々なスポーツ団体に対しておこなってきたスポーツ協賛への経験が活かされことで実現出来たと話す。

「選手の皆さんからは様々なご意見を頂いてきました。選手たちがスーツのことでどんな悩みを持ち、どんなスーツを求めているのか。様々なスポーツ団体へのオフィシャルスーツ提供で得た貴重な生の声が、東京2020日本代表選手団の公式服装やテクニカルオフィシャルユニフォーム(フォーマルウェアのみ)にも活かされているんです」

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式服装のコンペで、我々は選手ファーストといったテーマでいきました。如何に選手たちが着やすくて、ストレスなく競技に集中出来るかといった部分にこだわり、追求しました。さらには、夏の開催ですから素材選びでは通気性も重視しました。こういったところが評価されたんだと思います。これはビーコルさんをはじめ、多くのスポーツ団体の皆様との取り組みによるところが大きいと考えております」

東京2020オリンピックエンブレムストレッチウォッシャブルスーツは裏地も凝った作りになっている。レディースも展開されている

 

諏訪社長が思い描くビーコルとのこれから

諏訪社長は、ビーコルとのコラボレーションから得るシナジーに大きく期待している。今後は、さらなる“夢”も持っているようだ。

「最近ではスーツ離れが顕著です。ビーコルファンの皆さんの中にもスーツを着ない方が沢山いらっしゃると思うのですが、ビーコルのオフィシャルスポンサーをやらせて頂くことで、皆さんがスーツを着ることへの入口になってくれたらと期待しているんです。ファンの皆さんが『憧れの選手がスーツを着ていてかっこよかった』『あのスーツはどうやらAOKIらしい』こんな形でスーツを知ってもらって、興味を持って頂いて、AOKIに来て頂く。こういった接点、スーツへの入口を作っていきたいと思っています。この逆の効果もあります。AOKIに来た顧客の皆さんが、AOKIが横浜ビー・コルセアーズのスポンサーをやっていて、オフィシャルスーツも作って提供していることを知って試合を観にいくかもしれません。お互いが相互に紹介し合って認知を高めていく。こういった関係性を作っていけれたらと思っています」

「もうひとつ、夢があります。AOKIはレディーススーツも販売していますが、いま働く女性がどんどん増えてきていて、レディーススーツもアピールしていきたいと思っています。オフィシャルスーツの提供では、女性スタッフの方にレディーススーツを提供していますが、夢は横浜のロールモデルであるB-ROSEの皆さんにAOKIのスーツを着て踊って頂くことなんです。我々の冠試合で、AOKIのストレッチ性抜群のレディーススーツで踊って頂けたら素晴らしいでしょうね」

「夢はB-ROSEの皆さんにAOKIのスーツを着て踊って頂くことです」

 

最後に諏訪社長はこう締めくくった。

「AOKIは商売を通じて横浜と都筑を盛り上げていきたいですし、選手の皆さんは、試合でのパフォーマンスを通じて地域に元気を与える。ファンや地域の皆さんはその姿を見て元気を得る。こういった良い循環を都筑区で築けていけれたらと思っています。ビーコルファン、ビーコルの選手たち、そして我々AOKIが一緒になって、横浜、都筑を盛り上げていきましょう!」

次回後編では、今季のビーコルオフィシャルスーツと横浜港北総本店を取材したレポートをお届けする。

【取材・写真・記事/おおかめともき・一部写真提供/©株式会社AOKI/©︎B-CORSAIRS/T.OsawaI】

・スーツのAOKI
https://www.aoki-style.com

・ORIHICA
https://www.orihica.com


Written by geki_ookame