自分に求められている仕事プラスシュートを決めるということを継続していく
11月12日に接戦の末に勝利した富山グラウジーズ戦GAME2後に#2高島一貴に話を聞くことが出来た。筆者は昨季に高島選手にインタビューしてから、ずっと追ってきているが、話しを聞くのは開幕前のプレスカンファレンス以来、久しぶりだ。攻守に渡るここぞの活躍で勝利に貢献しJA横浜賞を受賞した今回、満を持して話を聞いた。
前日に延長の末に逆転負けを喫した富山グラウジーズに翌日、雪辱を果たす勝利の原動力のひとつとなったのが高島一貴の活躍だった。この試合の4Qで決めた連続2Pシュートは勝利への大きなうねりを生んだ。
シーソー展開が続く接戦となったGAME2の4Q、グラウジーズが執拗に食らいつきスコアは63−60となり、リードはわずか3点。前日に4Q土壇場で同点にされ、延長戦で逆転負けを喫しているだけに緊迫した展開になっていた。胃が痛くなるほどに張り詰めた緊迫した空気のなかで、高島は6分23秒にアウトサイドからのジャンプショットで2Pシュートを沈める。
さらに5分55秒にディフェンスリバウンドを奪った細谷将司からのボールを受け取るとアウトサイドから鮮やかな2Pシュートを沈め、ビーコルブースターを総立ちにさせた。このゾクゾクするほどにしびれる連続シュートが大きな勝利の流れをもたらし、チームは以降リードを死守して勝利した。「僕もしびれていました」古田 悟HCもこのレイアップにしびれたひとりだ。この富山グラウジーズ戦で高島が魅せた2つのレイアップシュートは、昨季5月19日にB1残留プレーオフ2回戦で一時は逆転したあのレイアップを彷彿とさせた。
高島は前日のGAME1でも見事なレイアップを決めている。
「昨日に関しては、かなり疲労度が高くて、竹田さんが怪我してしまって、丈太郎(満田)が体調不良ということもあったので、長い時間出ることは分かっていたんですけど、やっぱり、ひとりで(前日30得点の)宇都選手について回るというのは流石に負担が掛かっていたんです。なので、どうしてもオフェンスには集中が出来ない部分もあったんですけど、その中でああいうシュートを決めれたのは良かったかなと思います」
今季開幕前のインタビューで高島は「今季はアグレッシブにいく」と語っていた。その強い決意はここまでの闘いの中で、しっかりと現れている。
「今年はタイムシェアをしているなかで、選手各々が持ち味をしっかりと出さないといけないというのがあります。やっぱりどうしてもタク(川村卓也)にオフェンスが偏りがちと思われると、相手も守りやすくなってしまいます。
点数が取れるアレク(湊谷安玲久司朱)が怪我してしまったんですけど、他も出れば点数を取れる選手がいるので、各々が持ち味をしっかりコートで出す。2点でも4点でもチームで繋いでいくことが、今の自分たちのバスケットなので、やっぱり出たからには積極的に、オープンになったらシュートをしっかり打っていくということを心がけています。シュートを打つこと、これはシーズン前から決めていたことなので、入る入らないにかかわらず、打つことは大切だと思うのでこれからも続けていきたいと思っています」
高島は、今季ここまで、37得点、平均得点2.5、数字だけを見ると少ないが、それらは存在感があり、チームに勇気と流れをもたらすここぞのシュートになっている。
「シュートの回数というのは、他の選手に比べると少ないとは思うんですけど、その中でも数少ないチャンスをしっかりと決めていくというのが僕の仕事です。竹田選手もそうですけど、本数は少なくても、それをしっかりと決めるということが、凄く大切だと思っています」「僕はシューターではないので、ひとりで10本も20本もシュートを打てるわけではないので、限られた2、3本の中の点数を確実に取っていくということが、チームの勝利に繋がってくると思っています。もちろんディフェンスが、僕に一番求められている最優先のことなんですけど、数字に出ないところも含めて自分の役割だと思っているので、これにプラスして今季は確実にシュートを決められるように意識してやっています」
古田 悟HCは勝利後の会見で自ら高島の活躍を讃え、喜んでいた。今季の高島にかける期待は大きい。
「高島選手は、ディフェンスで凄く頑張ってくれています。昨日のGAME1も頑張ってくれて、今日もオフェンスの部分でも、点は沢山入れていないんですけど、要所要所で決めてくれました。そして走ったり、カットしたり、目立たないんですけど、僕はそういうプレーが凄く好きですし、今後もディフェンスの起点として、プレーして欲しいです」
このことを高島に伝えると、「いやいやいや、とにかく必死でした」と、照れながら笑ったが、その笑顔には自信が溢れていた。
古田HCは4Q途中でベンチにいる高島に長く指示を出した後、山田謙治に代えて投入。高島はこの起用に応えて連続2Pシュートを決めた。古田HCはこの時の指示について語っている。
「外国籍選手につかせようと思っていました。ハシームも含めてファウルが重なっていたので、彼がディフェンスで対応出来ると思ったんです。全てを託した彼が結果を出してくれたのは、本当に嬉しいというか、自分でも良かったなと思っています」
高島はこの時のことをこう振り返る。
「JP(ジェフリー・パーマー)が出れないなかで、自分が外国籍選手にマッチアップするということは、この間の三遠戦もそうだったんですけど、これからもそういった役割が増えてくると思っています。自分に求められている仕事、プラスシュートを決めるというのが、HCが求めていることだと思うので、引き続き継続していきます」
昨シーズンあのB1残留プレーオフ2回戦で悔しさを喫した相手グラウジーズだが、選手としての意識はどうだったのだろうか。
「個人的には、何も変わらず、そこはやっぱり昨シーズンは、昨シーズンですし、今シーズンはグラウジーズも別のチームになっています。非常にアグレッシブで強いチームだと思っていたので、それに対してどう自分たちが闘っていくかということを心がけて準備してきました。もちろん、昨日、宇都選手が30点を取っていて、彼から始まる攻撃を潰すことがチームにとって勝利に繋がるポイントだと思っていたので、今日は竹田選手とシェアしながら、うまくつけたので、その点は凄く良かったと思います」
富山戦の直前に豊富な経験を持つウィリアム・マクドナルドが加入した。高島はマクドナルドのことをこう語っている。
「やっぱりベテランの選手ですし、彼自身もチームファーストの選手なので、『ゴール下は、僕に任せてくれ』と体を張ってくれていますし、彼はアウトサイドのシュートも非常に巧いんですよ。シュート練習しているのを見ても、本当に上手なんです」
早速、チーム内にケミストリーが生まれた形だが、コートで闘う高島もそれを大きく実感している。
「ウィルは、合わせるタイミングだったりとか、ゴール下で落ち着いてボールを持ってくれるので、今までの自分たちのバスケット、ビーコルのバスケットにはなかったものが入って来てくれました。インサイドにいるウィルにボールを入れることで、凄く落ち着くので、アウトサイドの選手がいきやすくなったんです。結果、この2試合で80点以上取れましたから、本当にウィルが入って、インサイドをやってくれるということが大きいです。今まではサビートにしろ、JPにしろ、ピックアンドロールの部分で、どうしてもゴールを背にしてボールを受けることが難しくなって、押し出せれることが多くなっていました。それをウィルが体を張ってやってくれることによって、バスケットがスムーズになりました。本当に経験豊富な選手が入ってきてくれたなと選手みんなが思っています」
高島は、マクドナルドが生んだ効果に大きく期待を持ちながらも、気持ちをさらに引き締めていた。
「ウィル本人もまだコンディションが100%ではないでしょうし、ここからまだ上がってくると思います。昨日のGAME1は勝ちゲームだったのを、自分たちで逃してしまった試合でした。今日(接戦を勝利したGAME2)のようなゲームがどんどん出来てきて、競ったゲームをとっていかないと、昨シーズンみたいに苦しいことになってしまいます。競ったゲームをとっていくことはチームの成長にも繋がってきますし、全員で勝ち切ることを意識してやっていきたいです」
高島は、マクドナルドを得た今のチームに大きな手応えを感じている。ここから昨シーズン経験した苦い経験から得た教訓を活かして、浮上していかねばならない。
「僕自身、凄く手応えを感じています。あとは、細かい戦術、戦略、ディフェンスの細かいルールというのを選手全員が徹底出来るようになってくれば、もっともっと楽に試合運びが出来ると思います。まだどうしてもディフェンスの面でルーズな部分が出てくるので、それを全員がエクスキュート出来ないと結果には結びつかないと思います。自分たちは昨シーズン、一勝の重みというのを凄く味わってきました。一勝を確実に取っていかないと、最終的に苦しくなってしまうので、目の前の試合を常に100%に闘って、勝っていくことが大事だと思っています」
最後にB-COR MAGAZINEを読んでくれているビーコルブースターにメッセージを送ってくれた。
「チームひとり、ひとりが勝利のために何が出来るかというのを、アレクを含め、本当に勝ちにこだわって今シーズンはやってきているので、まだ結果がついてきてないとは思うんですけど、僕自身はここから、全然浮上出来る可能性はあると思っています。中地区は団子状態ですし、まだ手探りのチームもあると思います。そのなかでチャンピオンシップに出られるようにするためには、ビーコルブースターの皆さんの応援が凄い必要になってきます。昨日今日、アリーナの一体感が凄くありましたし、ブースターの皆さんの気持ちが選手には凄く伝わっているので、今後とも熱い応援をよろしくお願いします!」
このインタビュー後の11月18日と19日、高島はプロとして最初にプレーしたチーム、シーホース三河(当時はアイシンシーホース。2006年から2014年までプレー)に、久々に戻ったウィングアリーナ刈谷で挑み歓迎を受けた。GAME1では2Q終了間際にアウトサイドから2Pシュート、GAME2でもここぞのシュートと体を張ったディフェンスで、古巣のブースターに今の高島一貴の躍動を披露して、恩返ししてみせた高島。「今季は限られた中で打つシュートを確実に決めていく」このことが引き続き実践出来ている。
ウィリアム・マクドナルドを得て、さらなる決意で、ここからの浮上を目指す海賊たち。その中で高島一貴は、ブースターと共に、ただひたすら勝利を渇望し、チャンピオンシップを目指して邁進していく。
【写真・インタビュー・記事/おおかめともき】