アドバイザートーマス・ウィスマンが語ったベンチ入りの真相 そしてビーコルでの役割と使命とは。
遂にベンチ入りしたトーマス・ウィスマンに話を聞くことが出来た。ビーコルブースターにとっては、ウィスマンが「アドバイザー」ということは分かってはいるが、その役割と立ち位置がいまひとつわからない人も多いのではないだろうか。恐らく、名将ウィスマンがビーコルに来てから初めてになるであろう今回の独占インタビューでそのことを詳しく聞いた。B-COR MAGAZINEに語られたその内容は、ここからの決戦に向けて勇気とモチベーションが沸いてくるものだ。
トーマス・ウィスマンは、シーズン途中の昨年11月にアドバイザーとしてビーコル入りしたが、これまではベンチには入らず、ホームではT.O(テーブル・オフィシャルズ)席の後で試合を見守り、千葉戦以外のアウェイには帯同しなかった。試合前、ハーフタイムで尺野HCらにアドバイスをしていた場面はあったものの、主には練習時にアドバイスを送っていた。
昨季、栃木ブレックスをチャンピオンチームにまで押し上げた名将ウィスマンが、低迷するビーコルに加わったことは、ビーコルブースターに勇気と希望を与え、チームも時間が経つにつれて進化成長をみせ、成果を生んでいった。
しかし、状況は悪化しビーコルは2月17日豊橋でのアウェイ三遠戦からBリーグでのクラブ最多連敗記録タイとなる10連敗に陥った。B1残留プレーオフ回避のためにも、もうこれ以上負けらない。待ったなしとなった翌3月25日のホーム三河戦から遂にウィスマンがベンチ入りし、尺野将太HCの隣に座った。
ティップオフ直前の円陣にウィスマンの姿があったことは周囲を驚かせ、富山でのグラウジーズ戦でもウィスマンは初めてアウェイに帯同してベンチに入った。このことは残留プレーオフ回避へ向けたチームの覚悟の表れといえる。
ウィスマンは、ベンチ入りした経緯をこう明かしている。
「最初のロール(役割)としてはアドバイザーという形で入っていたのですが、このチームは若いコーチングスタッフで闘っています。苦しむ彼らを助けるためにはベンチの中でアドバイスするしかないと思ったんです」
「(ウィスマンがビーコル入りした)11月以降で、チームは少しずつ良くなっていったのですが、まだ曲がり角を曲がり切れていないところがありました。チームが泥沼にハマってしまい、残留争いの真っ只中で、私ももっと何かをしなければならない。そう決断して、クラブとも話し合った結果、ベンチに入ることが一番いいアイデアだと思ったんです。残り試合は、全部ベンチにいるつもりです」
ビーコルのピンチがウィスマンを動かし、ベンチ入りを決意させた。
「三河戦のときに、何かを変えなければという気持ちが私にもありました。問題点、課題もいろいろとありますし、何より残留争いを迎えています。クラブからは前からベンチに入って欲しいといわれていて(三河戦後の)水曜日の三遠戦から入って欲しいとの要望があったのですが、それよりも早く、私が三河戦のGAME2でベンチに入ってチームが変われば、三河からひとつ盗めると思ったんです」
ウィスマンがベンチに入った以降でチームは2勝2敗。この4試合全てが接戦となり、得点力も上がった。一方的な負けがなくなったばかりか、ビーコルは王者三河をも苦しめ、互角に闘えた時間帯もあった。ウィスマン効果は確実に出て来ている。
「私がベンチに入ったことで、ここ4試合はチームのエナジーが良くなってきました。今こそ強いエナジーが必要です。チームには、ポジティブなエナジーが溢れています」
気になるのはウィスマンの残り試合での立ち位置だ。アドバイザー以上のロールを担っていくのだろうか。
「答えはNOです。私はあくまでアドバイザーで、尺野さんがこのチームのヘッドコーチです。彼のことを出来るだけ助けたい。それが私の目標です。彼のディシジョン(判断)を助けてあげたいというのが私の想いなんです」
ウィスマンは、いまのチームをどう感じているのだろうか。
「このチームは、才能が揃った「個」が強いチームです。しっかりとした才能がある一方で、チームがひとつにまとまり切れていないという現実があります。そこをまとめあげるのも私の役割だと思っています」
「チーム力だったり、ケミストリーというのは、ネガティブなものを排除して、自分のポジティブなものを全てに注ぎ込み、お互いを信頼し合うことが重要です。選手、チーム、コーチがお互いに信頼し合える関係を作っていかないといけません」
「私はいつも、このチームが試合に勝てるための才能を持っていると信じています。しかし、毎試合、あともう少しというところまで来てはいるものの、勝てていないというのが現実で、本当に勝てる試合を落としてしまっているというイメージがあります」
B1残留プレーオフを回避するために何が必要かと聞くとウィスマンは即答した。
「勝つことです。勝ち続けるしかないです。ここで必死になって勝ちにいくだけです」
「富山戦GAME1での勝利で13勝目。(B1残留プレーオフ回避のために)越えなければならない滋賀が17勝で4ゲーム差です。滋賀よりも4ゲーム多く勝たないと残留プレーオフに落ちてしまうんです。だから、もっとどんどん勝っていくしかない。あと11試合を残しているなかで何が出来るのか、自分たちのことをしっかりと見つめ直して、出来るだけのことをやっていくしかないのです」
いつもホームアリーナで、ビーコルブースターと親しく接しているトーマス・ウィスマン。常にバスケを愛し、エンジョイする情熱溢れるジェントルマンだ。最後に共に闘うビーコルブースターへメッセージを送ってくれた。
「いつもビーコルブースターの皆さんと接することを楽しんでいますし、チームの挑戦も楽しみにしています。このチームのポテンシャルは凄くあると思っています。そしてビーコルには、本当にいいブースターが沢山います。そのブースターの皆さんを喜ばせるためにベストを尽くしてやっていきます。このチームをB1に残すという使命が私にはあります。それをしっかりとやっていきます。本当に皆さんのサポートは必要ですし、いつもありがたく感謝しています」
ビーコルは、遂にベンチ入りしたトーマス・ウィスマンを加えた海賊総動員で4月、5月の残り11試合をビーコルブースターと共に闘い、何としてもB1残留プレーオフを回避する覚悟だ。
次節ビーコルは、ホームトッケイセキュリティ平塚総合体育館に西宮ストークスを迎え、絶対に勝たねばならない決戦に挑む。
【写真・インタビュー・記事/おおかめともき】