悪夢のファウルゲーム。4Q残り23秒にフリースロー4本を外し、3Pと3点バスケットカウントを決められる。
横浜ビー・コルセアーズ 82-84 富山グラウジーズ(4月1日・富山市総合体育館)
22-23|21-17|17-24|22-20
横浜ビー・コルセアーズは、アウェイ富山市総合体育館で富山グラウジーズとGAME2を闘い熾烈なクロスゲームの末、4Q終盤に勝ち越しをしたが、残り23秒でファウルゲームを仕掛けた富山に逆転を許し、今季初の3連勝を逃した。
前日の連勝で勝利の歓喜に酔いしれた同じ場所で悪夢の悲鳴が上がった。82対78で迎えた4Qラスト23秒。4点差になった富山は前日同様にファウルゲームに持ち込んだ。ビーコルはフリースロー4本を外してしまい、富山に3Pと2Pでの3点バスケットカウントを決められ痛恨の逆転負けを喫してしまった。
壮絶な試合だった。ビーコルが沈めれば、宇都が決める。富山でのGAME2は前日以上の一進一退の激戦となり、特に4Qでの接戦は熾烈を極めた。
1Q、上江田勇樹の2Pで富山が先制するが、ビーコルはウィリアム・マクドナルドの2P、満田丈太郎の3P、川村卓也の3Pの3連続得点で流れを作ったが、宇都直輝に2P、フリースロー2本、3点のバスケットカウントで7得点を入れられ逆転を許す。
前日のGAME1での勝利も、宇都には18得点、B1リーグ最多アシスト記録タイとなる14アシストを許していただけに、その対策が課題になっていたが1Qで12得点を許し、スタートでいきなりやられた形になった。
しかしビーコルも負けてはいない。気持ちを前面に押し出したショットを次々に沈めていく。6分4秒に細谷将司がレイアップ、5分40秒には川村が3P、4分25秒には満田が3P、3分50秒にはマクドナルドが2P、2分23秒にはハシーム・サビート・マンカが2Pシュートを沈め、出だしの1Qでフィールドゴールを64.3%の高確率で沈めた。
富山はピットマン、上江田、宇都らが得点をかさねクロスゲームとなっていった。残り50秒で高島一貴がアウトサイドから2Pを沈め逆転したが、直後の同39秒で宇都に3点のバスケットカウントを決められ1Qは22-23。1点のビハインドで最初のクォーターを終える。
2Qでは、サビートが3本の2Pとフリースロー1本を沈めて7得点、4リバウンド、ブロックショット1で躍動。満田、マクドナルドが3Pシュート1本を含む5得点。竹田 謙とジェフリー・パーマーがそれぞれ2Pを1本ずつ沈め、ビーコルはこのクォーターでもフィールドゴール62.1%の成功率で富山の45.5%を上回った。
このクォーターも一進一退となったが、残り1分53秒で竹田が2Pを沈めて勝ち越し。サビートのフリースローでさらに1点を加えて2Qを43-40。3点のリードを奪って逆転に成功した。
3Q、マクドナルドが内外から2本の2P、佐藤託矢が2Pを沈める。しかし開始9分45秒で宇都にレイアップを決められ、さらには大塚裕土に2本の2Pを許す。
6分2秒、ウィラードの2Pで富山が1点差で逆転。直後の5分31秒、シュートを狙ったマクドナルドが防ぎに入ったウィラードと接触。左脚を痛めて退場する(マクドナルドはこのあと4Q途中で復帰している)。この直後の5分13秒に大塚に3Pを許してしまいビハインドが6点に広がった。
ビーコルは川村のアウトサイドからの2P、細谷のフリースロー3本、サビートの連続2P、高島の2Pで追撃したが、3Qで初めてクォーターでのリードを許し17-23。トータルスコア60-64となり、4点のビハインドで最終クォーターに突入する。
前日のGAME1に続く接戦は、ゲーム終盤に向かうに連れて壮絶さを極めていき、ビーコルは4Q出だし9分11秒のジェフリー・パーマーの3Pを皮切りに得点をかさね、 3分28秒の細谷の3Pで追いつくと、川村のフリースロー(2本中1本成功)で勝ち越しに成功。さらに川村は同2分34秒にフリースロー2本。同2分7秒には3Pも沈めリードを広げた。
残り59秒、ウィラードからスティール狙うもボールをこぼし、体制を崩しながらラインギリギリで、中にボールを送った細谷が広告看板に激突して右肘を打ち付けるアクシデント。富山のタイムアウトのあと、細谷は痛みを堪えてプレーを続行。残り37秒、その細谷が渾身のレイアップを沈めて富山を6点差に突き放した。
しかし残り29秒にウィラードにセカンドチャンスから2Pを決められリードは4点。残り23秒で4点差となった富山はファウルゲームを選択し、細谷にファウルを仕掛る。細谷はフリースロー成功率リーグ3位だったが直前に右肘を強打している。細谷は2本とも外してしまい痛恨のミス。直後のリバウンドを奪った上江田に3Pを決められビーコルは1点差に追い詰められてしまう。
なおも富山はファウルゲームを続行。今度はパーマーに仕掛け、ビーコルベンチは川村、細谷に代えて竹田と満田を投入。富山ブースターの凄まじいブースターディフェンスが支配する中で、パーマーまでもがフリースロー2本を外してしまう。直後ウィラードがディフェンスリバウンドを奪い、上江田がバスケットカウントの2Pを決めて富山が土壇場で逆転する。
富山のライコビッチHCはこの策について試合後、こう明かしている。
「ファウルゲームをしようということになり、川村選手にはボールを持たせずに、他の選手が持った時点でクイックファウルをしてフリースローを打たせようとしました」
ビーコルはここでタイムアウトを掛け、竹田と満田に代えて川村と細谷をコートに戻す。上江田はフリースローを決めて3点のバスケットカウントとなりビハインドが2点になった。
残り2秒を切り、川村がラストチャンスでの3Pで再逆転を狙いにいったが執拗な富山ディフェンスの前にショットが打てない。川村が打とうとしたとき、試合終了のブザーが鳴り響き、ビーコルはあまりに痛恨な逆転負けを喫してしまった。
試合後、敵将ライコビッチHCは、両チームの激闘をこう称した「This is Basketball」と。
ビーコルは、ホーム三遠戦、富山でのGAME1に続く今季初の3連勝を逃し13勝36敗。5位富山とのゲーム差を「8」に戻した。B1残留プレーオフ回避の指針ワイルドカードでは、12チーム中の10位は変わらず。9位大阪と回避のデッドライン滋賀とのゲーム差は「4」に広がった。
富山は4位に浮上。3位三遠との差を「1」としCS進出への可能性を残した。
ビーコルのスコアリーダーは3本の3Pを含む18得点を挙げた川村卓也。ウィリアム・マクドナルドが15得点。ハシーム・サビート・マンカは14得点、リバウンド7、ブロックショット5を記録した。
満田丈太郎は二桁11得点。奮闘をみせた細谷将司は10得点を挙げてアシスト7を記録した。
また富山の宇都直輝はキャリアハイとなる30得点を記録した。
ファウルゲームは、そう簡単に成功するものではない、事実、前日GAME1で富山が4点ビハインドで試みたが、高島一貴に2本とも決められ、奪ったリバウンドからのシュートも外し失敗していた。
それがこの試合で全く真逆の展開となり、ビーコルは2度のフリースロー機会を4本とも外し、さらには3Pと2Pでの3点バスケットカウントも決められてしまい成功確率が非常に低いファウルゲームの成功を許し、富山にとっては大逆転のドラマ、ビーコルにとっては悪夢の幕切れになってしまった。
逆転を決めた上江田はこう振り返っている。
「昨日ああいう場面で外してしまっていたので、今日同じ場面になれば決めようと思っていた」
前日に接戦を制した海賊が、富山にやり返されてしまった形だ。
尺野将太HCは、試合後の会見で前を見据えていたが言葉少なだった。
「昨日に続いて厳しいゲームになりましたが、39分経ったところで富山さんに8-0のランを許してしまい、最後の最後でいいバスケットをさせてしまった。本当に勝つチャンスがあったゲームだっただけに、この敗戦はかなり痛い。今後同じミスを繰り返さないように残りの試合を闘っていく」
ビーコルは前日にフリースローを92.0%高確率で決めて勝利に繋げたが、この日は53.7%と伸びなかったことも敗因だろう。しかし、選手たちは前日以上に勝利への欲求と執念を剥き出しにして、40分間を死力を尽くしてプレーし続けた。
川村はベンチで吠え、チームを鼓舞した。4Q終盤でのビーコル選手たちの氣魄、絶対に3連勝するんだ、勝ち切るんだという強い気持ちは多くのプレーで表れた。
特に残り59秒で広告看板に激突し右肘を打ち付けてもプレーを続行し3Pを沈めた細谷の怪我をも恐れぬ決死のプレーは、勝つことへの強い意志の表れだった。
富山とは今季6試合を闘い4勝2敗と勝ち越した。試合後、富山のミオドラグ・ライコビッチHCに、ビーコルの率直な印象を聞いた。
「横浜さんのゲームは沢山観ています。横浜さんは、前半戦で怪我人が多く出たことと、コーチの交代などで立て直しに苦しんでいましたが、今はシリアスでハイレベルなチームです」
「今だけでいえば、チームレベルはCSに出れるレベルでしょう。名古屋さんとは(GAME2で)僅差の惜敗でしたし、三遠さんには勝って、結果がどんどん出ていると思います。ただ成長が遅くなってしまった。前半で起こったことが、スタートで出遅れさせてしまったのではないかと思います」
「川村選手は日本で屈指の選手です。サビート選手も凄く良くなっていますし、川村選手とのコンビネーションも出来てきています。マクドナルド選手は経験もあって、パーマー選手は日本のバスケットをよく知っています。今の状況を見ると非常に強いチームです。とても尊敬しています」
ショックの大きい敗戦だが、三遠戦と前日の富山戦GAME1で接戦の末に連勝し、このGAME2でも接戦だった。ここ数戦で接戦が出来ていることは、チームが確実に進化していることを証明している。それは闘ったライコビッチHCも認めている。
アドバイザーのトーマス・ウィスマンがベンチに入ったことも大きいだろう。今回の悔しさがさらなる進化成長と、チームケミストリーを加速させる。
選手たちの勝ちへの欲求は、日に日に強くなっている。残り11試合、B1残留プレーオフ回避に向けた闘いを全て勝ち切る覚悟で4月、5月の決戦に挑む。
次節ビーコルは、ホーム平塚に西宮ストークスを迎えて2試合を闘う。
【写真・記事/おおかめともき】