トーマス・ウィスマンが遂にベンチ入り!3Q途中まで互角の闘い。4Qラストで海賊たちが見せた意地とプライド。
横浜ビー・コルセアーズ 74-89 シーホース三河(3月25日・横浜国際プール)
14-20|21-19|23-33|16-17
横浜ビー・コルセアーズは、ホーム横浜国際プールで中地区優勝目前のシーホース三河とGAME2を闘い15点差で敗れ、チーム最多連敗タイ記録となる10連敗を喫した。
中地区優勝への優勝マジックを「2」としていたシーホース三河は、名古屋Dが大阪に勝利したためにマジック「1」となり、優勝は次節ホーム名古屋Dとの直接対決に持ち越された。またシーホース三河は、この勝利でチャンピオンシップ進出が決定した。
同中地区6位のビーコルは、5位富山とのゲーム差が8。B1残留プレーオフの指標となるワイルドカード12チームの中でビーコルは依然10位。9位滋賀とのゲーム差は3に広がり、残留プレーオフのデッドラインである8位大阪とは4ゲーム差になった。
前日のGAME1を22点差で落し、チームの今季最多連敗を更新する9連敗を喫し、B1残留プレーオフ回避に、待ったなしのビーコルが動いた。
ティップオフ直前、ベンチでの円陣に昨年11月にチームのアドバイザーに就任していたトーマス・ウィスマンの姿があり、そのまま尺野将太HCの横に座り、試合中は指示も送っていた。
昨シーズン栃木ブレックスをBリーグ初代王者に導いた名将トーマス・ウィスマンがアドバイザーとして海賊入りしたことは、選手とビーコルブースターに大きな勇気を与え、歓迎された。
しかし、ウィスマンはここまでホームゲームには姿を見せていたもののベンチ入りをせず、練習でのサポートに徹していた。
残り試合が少なくなるにつれて苦しい展開が続くなか、ウィスマンのベンチ入りが待望され、その動向が注目されていたが、この試合でそれが遂に実現となった。
ビーコルは前日の敗戦を受け、スターティング5を変更してきた。前日に胃腸炎から2試合ぶりに復帰した川村卓也と、ハシーム・サビート・マンカを起用。細谷、川村、高島、佐藤、サビートでオフェンシブな布陣を敷いた。
ベンチにウィスマンが入ったことで、これまでにない良い緊張感が生まれ、引き締まった。その効果が1Q開始早々9分20秒に出る。
エース川村卓也が鮮やかな3Pシュートを沈め、最高のスタートダッシュを決めたビーコルは、出だしから気持ちを全面に押し出してアグレッシブに三河にぶつかった。
しかし川村の3Pの直後、比江島 慎に3Pと2Pを連続で決められ逆転を許すと、また比江島に3Pと2Pを決められ、さらには桜木、金丸、橋本にシュートを許しビハインドが広がってしまう。
ビーコルは、オフェンスリバウンドを多く奪ったもののシュートがなかなか決まらず、ディフェンスリバウンドからの失点が多くなった。
しかし三河にも誤算があった。桜木が1Qだけでファウル3つ。出だしからファウルトラブルになった。
川村の3Pのあと、ビーコルはフリースローで3点を入れたが、フィールドゴールでの得点は2分42秒の田渡 凌の2Pシュートまでなく、ここから川村が2P、マクドナルドが2本続けて2Pを沈めて追撃。1Qは14-20で6点のビハインドとなった。
2Qでもビーコルはアグレッシブなディフェンスを展開。それが功を奏し三河にもシュートミスが出始める。
このクォーターで、ジェフリー・パーマーが2本の3Pを沈めて10得点を挙げ、攻守に躍動。気持ちを前面に押し出したシュートが冴えに冴えた。
このパーマーを起点に、高島一貴、田渡 凌、満田丈太郎がシュートを沈め、3分1秒と1分33秒の川村が2Pと3Pを沈め21得点を奪った。
ディフェンスも三河の得点を10点台に抑えることに成功し、2Qを21-19でリード。トータルスコアを35-39とし、ビハインドを4点に縮めて前半を終えた。
3Qでビーコルは破竹のオフェンスをみせた。開始早々9分37秒にハシーム・サビート・マンカがアウトサイドから2Pシュートを沈めると、8分28秒と7分49秒に川村と細谷が続けて3Pシュート。
この直後の7分13秒にはサビートが力強いダンクを沈め、6分47秒に川村の絶妙なアシストを受けた佐藤託矢が桜木ジェイアールの意表を突いて背面シュート。5分58秒には細谷が素速いパス回しから3Pシュートを沈めて50-50の同点に追いつき、大きな流れが生まれた。
5分17秒、川村の3Pが外れたオフェンスリバウンドを取ったサビートの2Pが外れ、アイザック・バッツにディフェンスリバウンドを奪われると桜木ジェイアールに2Pシュートを決められてしまい三河が再び逆転。
ビーコルはここからミスが相次ぎ、この流れを手放してしまう。連携ミス、シュートミスから、ディフェンスリバウンドを奪われ失点に繋がってしまった。
激しいリバウンド争いのなかで、三河は確実にシュートを決めていき、ビーコルはこのクォーターで大量33点を失ってしまった。
1分58秒に満田が2Pシュート、直後の1分28秒に川村が3Pシュート、残り19秒で細谷が3Pシュートを沈めて応戦したが、同点になってから22点もの失点を喫してしまい3Qは23-33。トータルスコアは58-72となりビハインドは12点に広がった。
4Q、9分17秒にパーマーが2Pシュートを沈めたが、バッツ、桜木、金子がシュートを決めてくるなかでディフェンス一辺倒となり得点が停滞しまう。
5分11秒に満田が3Pシュート、3分57秒と2分7秒に田渡が2Pシュートを沈めた。
この直後、橋本に2Pを決められたが懸命なディフェンスで三河の得点を抑え、2分7秒に田渡が2Pシュート、1分17秒に細谷が3Pシュートを沈めて再び流れが来た。
残り1分を切って15点差。それでも選手たちは諦めずに攻め立てた。ベンチの川村は立ち上がって手を叩き、大きな声を張り上げてコートの選手たちを鼓舞。コートの選手たちは気迫と気持ちをむき出しにして闘い続けた。
残り30秒、サビートがアウトサイドからのロングシュートで2Pを沈め、ビーコルは懸命なチームディフェンスを仕掛け意地をみせたが、残り12秒で狩俣昌也にフリースロー2本を決められてしまい15点差。それでも選手たちは諦めずに攻め続けた。
残り5秒でパーマーが打った3Pシュートが弾かれ、コートニー・シムズがディフェンスリバウンドを取ったところで試合終了のブザーが鳴った。
最後に点差を忘れさせるほどに攻めに攻め続けたあの必死な姿は、海賊たちの意地とプライドだった。
試合後、川村卓也は悔しさを滲ませながらも、うつむくことなく前を向いた。そして細谷、満田、田渡の肩を抱き寄せ、何かを諭すように話していた。
胃腸炎から復帰後の2試合目で川村は17得点を挙げてカムバックした。死力を尽くしてチームを牽引した川村は試合後のセレモニーでビーコルブースターにこう語っている。
「休み明けでなかなかパフォーマンスが上がりませんでしたが、シュート確率はもっともっと上げれる部分があると思います」
「王者相手に途中までイーブンなゲームが出来ました。自分がチームに何かきっかけを与えることが出来れば、必ずチームは良くなると思うので、しっかりとポジティブにひとつひとつのゲームにこだわって、結果を求めて、これからも試合をしていきます。次の試合が今季の横浜国際プール最後のゲームになるので、またあと押ししてもらえると助かります。今日はありがとうございました」
チームのスコアリーダーは4本の3Pシュートを沈め17得点を挙げた川村卓也。川村はアシスト5も記録した。
ジェフリー・パーマーが気持ちを前面に押し出した14得点(3Pシュート2本)。細谷将司が4本の3Pシュートを沈めて12得点を挙げた。
ハシーム・サビート・マンカと田渡 凌が8得点。田渡はアシスト6も光った。満田丈太郎は7得点を挙げている。
ウィリアム・マクドナルドはわずか4点に沈んだ。キャリア通算3,000得点達成まであと1に迫っていた竹田 謙は得点なし、記録達成は次節に持ち越された。
山田謙治と蒲谷正之の出場はなかった。
試合後、尺野将太HCはこの試合をこう振り返っている。
「昨日の反省から修正した部分、変更した部分を前半のプレーで実行し、気持ちの部分でもしっかりと闘えました。ジェイアール選手のファウルトラブルもあり、ウチがいいプレーをした結果、自分たちのやりたいことが出来ました」
「ただ、やはり地区優勝が目前の三河さんなので、3Q(同点後)に修正して来ました。3Qはウチとしても良いプレーが続き、クォーターでいえば一番点数が取れましたが、そこで13-0のランを許してしました」
「そこからターンオーバーからの速攻で、いいシュートを打ってはいましたが、決め切ることが出来ず、三河さんはしっかりと決め切った。3Qで離されてしまった部分が、かなり痛かったです」
「そうなってしまうと、三河さんは力のあるチームなので、4Qは落ち着いて、点数を詰められないように試合運びをされてしまった」
「選手たちからは、悔しいという発言がまだあります。今日、三河さんに通用したプレー、向かっていった姿勢というのはこの先、もう本当に残り少なくなりましたが、この敗戦を残りの試合で勝つために、勝つためのきっかけにしていく必要があると思っています」
「正直、へこんでいて、気持ちが落ちている部分もありますが、今日のプレーをしっかりと残りのゲームに、残りのゲームを勝つために繋げていけるように、またチーム一丸となって闘っていきます」
今季も喫してしまった10連敗。王者に全力でぶつかり敗れたこの敗戦が、チームをまたひとつ成長させたことは確かだ。
ウィスマンが初めてベンチに入った試合で、王者目前のチームを脅かし、途中まで互角に闘えたことは大きい。
ウィスマンが本格的にベンチで指示をすることにより、今後の闘いで良いケミストリーが生まれるだろう。それが現状を打破し、勝利に繋がることを願いたい。
選手もビーコルブースターも、川村が言ったようにポジティブに、しっかりと前を向いて立ち向かう必要がある。
次節の三遠戦が横浜国際プールの最後の試合だ。悔いの残らないゲームにしよう。そして必ず勝利して、連敗を止めよう。
【写真・記事/おおかめともき】