フロントも変わる。お客様に喜んでもらえるビーコルに。
横浜ビー・コルセアーズは変化を求め、初のチームスローガン『BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)』を掲げ、内外に強い意志と決意を示した。では、現場で何がおこなわれているのか、ビーコルはどうなっていくのか、ビーコルは強くなるのか、変革のキーマン4人、河内敏光GM、トーマス・ウィスマンHC、今季新たに就任したビーコルOB山田謙治チーム編成・強化担当兼アシスタントコーチ、植田哲也新代表取締役に話を聞き、全4回の連載で横浜ビー・コルセアーズのBリーグ4シーズン目『BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)』を俯瞰する。
今回はこの連載の最終回、植田哲也代表取締役に話を聞いた。
岡本前代表取締役CEOから引き継いだ重いバトン
植田氏は、今季、岡本尚博 前代表取締役CEOのあとを継ぐ形で、これまでの球団代表から代表取締役に就任した。その理由を植田氏はこう話す。
「今季は、8人の新加入選手を迎えて、チームは半分以上の選手が入れ替わりました。これは、Bリーグになってからの3シーズンで結果を出せなかったためです。クラブの組織としても体制を新しくして、代表取締役を岡本前CEO(岡本尚博)から私、植田がバトンを繋がせて頂きました。チームを一新させて、若返りを図る。そういった思いが強かったんです」
「(球団代表から代表取締役になって)もの凄く大きな責任を感じていますが、引き受けた以上は、本当に命がけでぶつかっていく決意です。岡本前CEOとは、これまで6年以上にわたって、ずっと一緒にやってきましたので、マインドも同じです。これまでに築いて来たものをしっかりと受け継ぎ、さらに拡大させていかないといけないと思っています。我々が作ったものを見てくださいではなく、ファン・ブースターの皆さまと一緒になって作り上げていく。皆さまに、横浜ビー・コルセアーズに関わって頂くことが大事だと思っています」
ビーコルをどう変える?
植田氏にビーコルをどう変えていきたいかと聞くと、こんな答えが返ってきた。その視点は顧客にある。
「バスケットボールをやるビーコルとしては、やはり常に強くいて欲しいですし、常にファン・ブースターの皆さまに喜び、楽しみ、ワクワクしていただける存在にしていきたいと思っています。選手たちにも、常にファンの方々を意識して欲しいと話しました。お客様があって、我々が成り立つ。技術、スキルがあるのはプロとして当然のことです。その技術、スキルを求めるのは何のためなのかを考えて欲しい。もちろん、勝つためもありますが、自分のプレーを見て、お客様が喜んでくれるかどうかということなんです。バスケットボールが巧くなるために練習するのではなくて、お客様に喜んでいただくために巧くなるという意識を持って欲しいと思っています」
チームを支えるフロントも変化が必要
植田氏は、チームのことに加えて、チームを支え、運営する側であるフロントの部分も担うことになる。ここまでの3人のインタビューは、チームの変化に関する内容だったが、植田氏はフロントも変わらなければならないと語る。
「私がやることにはフロントの部分がありますが、フロントも変わらなければなりません。そのひとつには、お客様への対応があります。まずは、今までクラブとして出来ていなかったお客様への対応を変えていきたいと思っています。当たり前のことを当たり前に『凡事徹底』させていきます」
「我々のフロントスタッフは、数少ないリソースでクラブの運営をおこなっています。そのためにはどうしても、ひとりで何役もこなさないといけません。このため、今まではそれぞれの業務をひとりで抱えてしまい、バラバラになってしまうこともありました。それをスタッフみんなでやる。チームワークで補っていきたいと思っています。今季からフロントを3つの部門(セールス、アカデミー、企画運営)に分け、これらがしっかりと連携出来るようにするための体制作りもおこないました」
2026年からのエクスパンション型リーグへの変更を見据えた施策
植田氏は、代表取締役として、この先の将来に待ち構えているリーグの変化も見据えていかないといけない。今季から、これまでに『ブースタークラブ』と呼ばれていた組織を『ファンクラブ』に変えたのもビーコルの将来を考えてのことだったという。
「2026年からBリーグはエクスパンション型リーグへ移行します。これは、現在のクラブライセンスの下に、シーズンの成績で決めているB1、B2の昇降格を廃止して、新たな売上高、入場者数、アリーナ要件を審査基準にするというものなんですけど、新基準のB1に入るためには、年間12億円の売上高、毎試合平均4,000人の入場者数などの条件を満たさないといけなくなります。かなりハードルが高い条件ですが、これらを見据えて、我々は集客を増やしていかないといけません。そのためには、まだバスケットボールを知らない層にも顧客になってもらう必要がある。それを考えた時に名称なども分かりやすくしないといけなかったのです。これまでの『ブースタークラブ』では、初めての人が聞くとそれ何?ってなってしまう。ブースター=ファンなんだということを知らない人は、まだまだ多くいらっしゃいます。今までは、バスケ用語を我々が押し付けていた部分もありました。そこで思い切って、広く一般的な『ファンクラブ』にさせて頂いた次第です。これまでに我々を支えてくださっているブースターの皆さまには、ビーコルがB1に残るために必要なことだと、ご理解をお願いするしかないのですが、『ブースター』という呼び方がなくなるわけではありません。クラブ側も『ブースター』を使っていきますし、ブースターの皆さんも、まだ知らない方々に『ブースター』という言葉を広めて頂けたら。そう思っています」
チーム初のスローガン「BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)」
そして、ビーコルが掲げたスローガン『BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)』については、このように話す。
「Bリーグになってからの3シーズンで結果が出ていない以上、何かを変えないといけない。みんなが、どういったチームにしていくのかを明確にして、それぞれがしっかりと認識する必要がありました。例えば、ヘッドコーチだけが、GMだけが、もしくは役員だけがチームの方向性を分かっている。そういった状態ではなくて、クラブ、チーム全体が、みんなが、どういったチームを作り上げていくのかを認識する必要があったのです。そのためには、クラブとしてのスローガンが必要でした」
「過去3シーズンで、素晴らしい選手もいました。彼らも勝とうと全身全霊を傾けてくれました。にもかかわらず、結果が出なかった。我々に足りなかったものは何だったのか?目指すチームはどういったものなのか?こういったチームにしていこう。こういったバスケットボールをしていくんだという強い意志がこの「BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)」という言葉に込められています。40分間の試合を通して、フィジカル、メンタル共に強いインテンシティを保ちながら、最後の最後まで決して諦めない。がむしゃらさ、必死さ、バスケットボールをプレーするのではなくて“闘う”。「BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)」は、我々の覚悟と決意の表れです。今季の選手たちも、これらに合致し、これらのことが出来る選手たちばかりを集めたつもりです」
「「BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)」は、その意味のひとつに“勇敢であれ”ということがあります。ぜひ、ファン、ブースターの皆さまには、今季の我々が、チームが、クラブが、「BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)」であるかどうかを、常に見ていて欲しいです。もし、我々が目指すことが出来ていなかったならば、その時は叱って欲しいし、アドバイスもして欲しい。今季の我々の姿勢を常に見ていて欲しいです」
今季のビーコルが目指すもの
今季のビーコルは、目標をどこに置いているのか?植田氏はこう答える。
「B1残留ということだけにフォーカスしてしまうと、残留プレーオフになってしまいますし、それを回避する闘いになってしまいます。チームに期待したいのは、やはりチャンピオンシップに出ることを目指して欲しいです。チャンピオンシップに出るんだ!ということを強く意識して闘っていって欲しいです」
植田氏は、その実直な性格と人柄を活かして、営業職でも自ら多方面に出向いて動き、日々多忙を極めている。そんな植田氏は、人と会うことが好きだという。
「常に意識を持って人と会うことが大事なんです。人と、人とのつながりがあって、我々ビーコルがある。地域の皆さまや、ビーコルを支援してくださっている企業様同士をつなげる“コネクター”でありたい。そう思っています」
ビーコルファン・ブースターへ
「今季のビーコルは「BE COURAGEOUS(=ビーカレイジャス)」のスローガンそのままに、40分間を最後まで走りに走って動き回る。そして、決して諦めない“闘う”バスケットボールをしていきます。ひとりよがりなプレーではなく、チームで勝ちを奪いにいきます。また、ホームゲーム会場でも、皆さまに喜んで頂ける体験を沢山作っていきたいと思っています。試合だけでなく、会場に来た皆さまに、何かしら“コト・モノ”を持って帰っていただけるようにしたいと考えています。シーズン中、皆さまからのご意見、こうしたほうが良い、こういったところは出来てるね、こういったところはダメといったことをぜひお聞かせください。お待ちしております。横浜ビー・コルセアーズは変わります!今シーズンもより一層のご声援をどうぞよろしくお願い致します」変革のキーマン4人に聞くインタビュー連載『BE COURAGEOUSを掲げし横浜ビー・コルセアーズ』はこれで最終回となる。4人のキーマンたちがこの連載で話したことは、ここまでのプレシーズンゲーム、アーリーカップで形となって表れてきている。シーズンに入った闘いで、今季おこなっている変化がどんな花を咲かせるのか。期待を持って、見守っていきたい。
【取材・記事・写真/おおかめともき/スローガン画像提供/©横浜ビー・コルセアーズ】
⬇これまでの『【連載】BE COURAGEOUSを掲げし横浜ビー・コルセアーズ』
第1回 河内敏光GMに聞く「編成」
http://b-cormagazine.com/interview/2019/07/31/kawachi
第2回 トーマス・ウィスマンHCに聞く「ビジョン」
http://b-cormagazine.com/interview/2019/08/06/wisman
第3回 山田謙治チーム編成・強化担当兼アシスタントコーチに聞く「コミュニケーション」
http://b-cormagazine.com/interview/2019/08/14/yamada