オンラインミーティングを繰り返す中で、早くも生まれている強い信頼関係
2020-21シーズンから横浜ビー・コルセアーズの指揮官に就任したカイル・ミリングHCに深く迫るインタビュー連載も今回が最終回。カイルHCを招聘したひとり山田謙治アシスタントゼネラルマネージャー兼アシスタントコーチ(以下山田AGM兼AC)に新指揮官について聞く。
カイルHCが掲げる3つのフィロソフィーとチーム方針が合致
――カイルHCを招聘したきっかけを教えてください。
山田:「カイルHCの誕生日が7月27日で、僕が1日違いの28日だったことがきっかけです。これは冗談ですけど(笑)、我々が昨シーズンやっていたハードでアグレッシブなディフェンス、速い展開のバスケットボールを今シーズンも引き続きやっていく上で、カイルHCが掲げている3つのフィロソフィー(哲学)『CREATE A TEAM(チームを作る)』『BUILD CONFIDENCE(自信をつける)』『STATISTICAL OBJECTIVES(統計的目標)』がチームの方針に合致したことが大きかったです。
カイルHCはチームケミストリー、チーム力を大切にして、信頼関係やコミュニケーションをとても重要視していますから、そういった部分も招聘した決め手になりました。
これまでにカイルHCとは、もう何十回もオンラインミーティングを繰り返してきています。その中で、いろんなことを話して、相談もしてきました。カイルHCも意見やアイディアをどんどん出してくれていますから、まだ実際に会っていなくても、非常に良いコミュニケーションが取れています。カイルHCが来日した時には、さらに良いコミュニケーションが取れると思っています」
お互いに目指す方向は同じ
――昨シーズンでトーマス・ウィスマン前HCと福田将吾前HCがやってきたスタイルを今シーズンも継承するということでしょうか?
山田:「そうですね。トム前HCもそうですし、途中から指揮を執った福田前HCもハードなディフェンスと速い展開のバスケットボールといったチーム方針を継承してやってくれていました。それを今季もブレることなく貫き、ブラッシュアップしていきます」
――カイルHCがインタビューの中で話されていたことの中にも、チーム方針と合致することが多かったと思います。
山田:「そうなんです。ディフェンスを重視しているところや、最後まで諦めない姿勢、リバウンドから速いペースに繋げていくスタイルが、我々がやろうとしていることと合致しています。既に、まだ日本籍選手だけですけど、チーム練習をスタートさせていますが、僕が選手たちに言っていることが、カイルHCの口からも出ていますから、お互いに目指す方向が合致していると実感しています」
来日前に日本語を勉強中
山田:「カイルHCは、いま日本語を勉強しているんですよ。日本のBリーグチームで指揮を執っていく上で、日本籍選手とコミュニケーションをしっかりと取っていきたいという気持ちが強いようです。非常に熱心な方だと思います。インタビューでも分かったと思いますけど、オンとオフがしっかりとしています。そういったことも非常に重要だと思っています。
コミュニケーションをとても大切にして、ディフェンスとチーム力を大切にしている。インタビューでも、チーム力を強調していましたよね。ディフェンスは一人で守るのも大事だけど、5人でやっているバスケットボールだから、チームでディフェンスをやっていく。僕もそういったことを大切にしてきているので、とても信頼しています」
――カイルHCの3つのフィロソフィーの中にある『BUILD CONFIDENCE(自信をつける)』は、いまのビーコルにとって、特に重要になってくるのではないでしょうか?
山田:「そうですよね。カイルHCには昨シーズンの映像を送って、向こうで見てもらったんですけど、個別の選手名を上げたレポートを送ってくれました。その中で、もう少し自信を持ってプレーしないといけないと指摘していました。選手たちには、今やっている練習で、もっと自信を持ってシュートしないといけないと伝えています。
カイルHCが来日したら、さらにつっこんだ細かい数字なども出てくると思います。現時点では、僕が言葉でカイルHCが求めていることを選手たちにしっかりと伝えて、カイルHCが来た時に、さらに上手くやっていけるように、コミュニケーションを大切にしながら練習をやっています」
カイルHCに期待すること
――カイルHCに期待することは、なんでしょうか?
山田:「カイルHCは、選手時代にリバウンドやルーズボールに積極的に飛び込んで、結構泥臭いプレーをしていました。そういったことを、選手たちに植え付けて欲しいです。そして、コミュニケーション能力を強化させて欲しい。外国籍選手含めて、コミュニケーションをしっかりと取ることが大事なんだということを植え付けて欲しいです。それが出来るHCだと、大きく期待しています。カイルHCが、このチームをどのように組み立てていくのか。僕自身も勉強になりますし、カイルHCと一緒に良いチームを作っていけれたらと楽しみにしています」
――ビーコルファンに、カイルHCを他己紹介してください。
山田:「まだ実際に会ってはいませんけど、現時点で感じていることは、オンとオフがしっかりとしていますね。そして、強い情熱を持っています。コートでは人が変わるということですから、時にはコーチングで熱くなるかもしれませんね。コートを離れたら、また人が変わって、ファンの皆さんとも、良いコミュニケーションを取って、ファンや地域の人たちとの触れ合いを大切にしてくれると思います。
カイルHCはビーコルで、いろんなことをトライするんじゃないかと感じています。世界で活躍して、アメリカとヨーロッパのバスケットボールに精通していますし、日本では日立(日立本社ライジングサン 現・SR渋谷)でプレーしていましたから、日本のバスケットボールスタイルに加えて、日本の文化、規律といったことも理解しています。そして、ファンを大切にしている。インタビューでも『ファンが最後まで楽しめるバスケットボールを』と言っていましたよね。ファンをとても大切に思ってくれていますから、期待は大きくなりますよね。僕自身、ファンの皆さんと同じで、カイルHCと会うのが楽しみで、今から心待ちにしているんです」
◇ ◇ ◇
ビーコルのチーム方針と、カイルHCのフィロソフィーが大きく合致し、考え方も同じだということが今回のインタビューで良く分かった。これは一枚岩にならなくてはならないチームにとって大きなメリットになる。
ビーコルとカイル・ミリングの出会いは非常に幸運な出会いだと思う。いまビーコルの指揮を執るヘッドコーチとして、これ以上にふさわしい人物はいないだろう。
カイルHCはアメリカとヨーロッパのバスケットボールに精通し、日本のバスケットボールスタイルも経験して分かっていることも大きい。熱いパッションを持つカイルHCがどんなケミストリーをもたらしてくれるのか。その期待は大きく膨らむ。
海賊の新しい指揮官は、新型コロナウイルスの影響からまだ来日こそしていないが、ミリング体制は既に強固な信頼関係を築いてスタートしている。チームコミュニケーションを重視するカイルHCは、いま日本語を勉強中だという。フランスのチームを指揮するためにフランス語が堪能であったのと同様に、ビーコルでも日本語が堪能になり、選手たちとコミュニケーションをしっかりと取っていくのだろう。
これまでにチームが推し進めてきたハードでアグレッシブなディフェンスと速い展開のバスケットボールを、新指揮官カイル・ミリングが継承し、さらに昇華させていく。ビーコルの10周年はポジティブなシーズンになるのではないか?2020-21シーズンの開幕が今から楽しみでならない。
【インタビュー・写真/おおかめともき・写真画像提供/©横浜ビー・コルセアーズ】
・横浜ビー・コルセアーズの新指揮官カイル・ミリングHCに聞く【前編:バスケットボール哲学編】
http://b-cormagazine.com/interview/2020/07/27/milling-1
・横浜ビー・コルセアーズの新指揮官カイル・ミリングHCに聞く【後編:プライベート編】
http://b-cormagazine.com/interview/2020/07/28/milling-2
・カイル・ミリングHCホームページ
http://www.kylemilling.com