長く苦しかった200日。大好きなバスケが再び出来る喜びを噛み締めながらプレーした復帰戦。
4月27日、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとのGAME1で遂にキャプテン湊谷安玲久司朱がコートに復帰した。湊谷は昨年10月9日のアウェイ北海道戦の試合中に右足アキレス腱を断裂。以来、治療とリハビリをしながら選手兼任コーチを務めてきた。
試合後の復帰会見に姿を現れた湊谷は、報道陣から「お帰りなさい!」と声を掛けられると「ありがとうございます」と、心から嬉しそうな笑顔を見せた。その表情は、大好きなバスケが再び出来ることへの喜びの表れだった。
実に6ヶ月18日ぶりとなる実戦復帰は2Qの2分55秒に訪れた。高島一貴に代わって湊谷安玲久司朱が大きな拍手と歓声に迎えられて遂にコートに立った。その時のことを湊谷はこう振り返る。
「僕はあまり緊張しないほうなんですけど、今日は緊張しました(苦笑)」
緊張していたと語った湊谷だが、復帰していきなり魅せたアシストは実に見事なものだった。湊谷は、半年以上のブランクを感じさせない精彩な動きで躍動し、正確なパスから川村卓也の2Pと細谷の3Pをアシストしてみせ、得点に繋げた。
活躍はこれだけでは終わらなかった。4Qの9分と8分の時間帯に、チームがディフェンスを突破されてしまい名古屋Dに3本の2Pを許した場面で、流れを変えるべく、湊谷が再びコートに立った。
「後半に出た時には、緊張はもう収まっていて、気持ちいい感じで、久しぶりにバスケしているな!ってプレーしていました。練習では、そういった気分は味わえないんで、最高に気持ち良かったです」
9分25秒にレイアップで2P、8分22秒には正確なショットでフリースロー2本を確実に沈めてチームを同点に導く。さらに7分55秒にはここぞで3Pを沈めてチームは勝ち越しした。湊谷の不死鳥のような連続得点に、ビーコルブースターは胸を熱くし、湊谷のカムバックを祝福した。
「今日は(ゲーム)感覚を掴むだけで、シュートは打たないでいいかなって思っていたんですけど、入って良かったですね」
長く苦しかった200日。復帰までの治療、リハビリは半年以上に渡った。その間、少しでもチームの役に立ちたい一心で選手兼任コーチを務め、チームメイトをサポートし続けた。
「ここまでバスケットをやってきて、これだけコートに立てない時間が長かったのは、本当に初めてだったので、途中で何度も心が折れそうになって、本当にキツかったです。でも何とかもつことが出来たのは、ブースターのみんなが、会うたび、会うたびに『待ってるよ』って言ってくれて、本当にそれが励みになりました。それを今日改めて思いました」
「今日プレーしてみて『また、コートで出来るんだ』って、また改めて思えたんで、それが今日の一番の収穫です」
気になるコンディションはどうだろうか。
「練習での5対5は入らせてもらっていたんですけど、今日実戦でやってみて、全然違うなと。今日はまだ3、4割です。残り試合で少しずつ試合に出て、残留プレーオフに向けて100%に持っていければと思っています」
復帰戦は、まだ3、4割だったという湊谷。それでも2Qでの正確なパスでのアシスト。4Qでシュートタッチが冴え渡った2P、フリースロー、3Pと全てを網羅した得点。100%になった時には、どんな活躍を魅せてくれるのだろうか。B1残留プレーオフに向けて、キャプテン・アレクのカムバックはこれ以上にない心強さだ。
「緊張はしてたんですけど、実はもっと緊張するなって思っていたんです。もっと頭が真っ白になるのかなって思っていたんですけど、意外に冷静になれましたね」
それは、選手兼任コーチをやってきた経験から得たことだという。
「(選手兼任コーチで)ベンチでずっと見ていたお陰なのか、試合の中でも冷静になれました。ここは、こうだからこうだなとか思いながらプレー出来ました。6ヶ月ぶりで、それが出来たことは、この先もっと活かせるなと思っています」
復帰戦は、勝利で飾れなかったが、プレーオフを何としても勝利してB1に残留する。
「クロスゲームをなかなか勝てなくて、今日で残留プレーオフが決まったので、残り試合は残留プレーオフを如何にして闘うか、自分たちの精度を上げていく試合になるので、タイムシェアをしながら残り試合を頑張っていきたいです」
バスケットが再び出来ることの喜びを味わった復帰戦。しかし、一方でこれから過酷なB1残留プレーオフが待っている。
「この半年間は、プレーでチームを引っ張ることが出来なかったので、残りの試合はプレーでチームを引っ張っていけれるように、キャプテンとして、それを第一にやっていきたい」
「ビーコルブースターの皆さんには、2年連続で残留プレーオフという形になってしまって、キャプテンとして本当に申し訳ない気持ちですが、もう切り替えるしかないので、絶対B1残留を目指して、チームでいい形で闘っていきたいと思っています」
復帰するこの日まで、試合前の練習やシューティング、イベントなどでボールを手にして、目を輝かせながらシュートを打っていた湊谷。その時に見せていた幸せそうな表情が心に残っている。会見後にそのことを聞くと湊谷はこんな言葉を口にして優しく微笑んだ。
「やっぱ、バスケが好きなんだなぁて。楽しくてしょうがないんですよ」
最後に、これから全力で闘えますねと声を掛けると、湊谷は微笑みながらも力強い表情を見せてくれた。“キャプテン・アレク” 湊谷安玲久司朱が帰ってきた。もう何も恐れることはない。B1残留に向けて突き進むだけだ。
【記事・写真/おおかめともき】