シーズン最終戦・第32節 vsアルバルク東京 A東京 71−73 横浜


クラブ最多19勝利なった!竹田 謙とカイル・ミリングHCのラストゲームを歓喜の3連勝締めで飾る!

2020-21シーズン第32節(5月5日アリーナ立川立飛
アルバルク東京 71-73 横浜ビー・コルセアーズ
19-19|15-22|24-17|13-15

【BOX SCORE / PLAY BY PLAY 5.5 [WED] アルバルク東京 vs 横浜ビー・コルセアーズ】
https://www.bleague.jp/game_detail/?ScheduleKey=6369&TAB=B

横浜ビー・コルセアーズは5月5日、今季の最終戦・対アルバルク東京戦をアウェーアリーナ立川立飛で闘った(4月11日(日)におこなわれる予定だったGAME2の振替試合)。無観客試合でおこなわれた試合は両チーム互角でスタート。2Qでディフェンス力を発揮したビーコルがリードを奪った。3QでA東京が巻き返し同点としたが、4Qの接戦を制したビーコルが2点差で勝利した。ビーコルは、前回4月21日アウェー戦でA東京から初勝利を挙げてから対A東京戦初の連勝。前節のホーム最終節・対新潟2連勝の連勝からは3連勝となった。2020−21シーズンの最終成績は19勝40敗。これでクラブが持つBリーグになってからの最多勝利数をひとつ更新し、19勝に伸ばした。ビーコルの3連勝は2016-17シーズン以来。ビーコルは東地区8位で2020−21シーズンの全日程を終了した。

接戦の末にA東京に勝利。クラブ最多勝利数を達成して喜びを爆発させる横浜ビー・コルセアーズ。写真中央は今季限りで引退する#25竹田 謙【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


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〜竹田 謙、現役最後の試合で有終の美〜

今季限りでの現役引退を発表していた竹田 謙が最高の3連勝締めでビーコルのユニフォームを脱いだ。竹田はブレックス在籍時に1度引退をしていたが、Bリーグ初年度の2016−17シーズンに横浜ビー・コルセアーズに入団して現役復帰。以来5年間同チームでプレーを続けた。最後の試合となったこの試合では途中出場から6分45秒間のプレータイムで4得点、1リバウンドを挙げた。A東京の追い上げを受けた3Qではディフェンスで奮闘し、オフェンスでは、一時は同点勝ち越しとなったフリースロー2本を仕留める活躍で勝利に貢献した。

3連勝締めで有終の美を飾った横浜ビー・コルセアーズ#25竹田 謙 【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


竹田は「まだ(引退の)実感がなく、シーズンが終わった感じがしない。勝って終わることができた。3回目(の復帰は)ないようにしたい」と茶目っ気を出しながらも万感の表情。3回目の復帰があるのかとの問いには「もうないです。でも前回(1回目の引退の時)もないと言っていたので、何も言わない」と笑った。

勝利後のベンチでチームメイトと喜びあう竹田 謙【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


〜カイル・ミリングHC、ビーコル最後の指揮を勝利で飾る〜

来季、フランスリーグに戻るカイル・ミリングHCもビーコルで執った最後の試合を勝利して終えた。現役時代に日本でもプレーしたことがあるカイルHCは日本で初めての指導者経験だった。新型コロナウイルスの影響から合流が遅れたが、地道な指導を続けてディフェンシブなチームを作り上げた。シーズン終盤では強豪チームと互角に競り合える競争力をつけさせ、4月にはこれまでに勝利がなかったA東京から初勝利。ホーム最終節では連勝を決め、今回のシーズン最終戦もA東京から初の連勝を挙げてクラブの最多勝利数記録を更新させた。

最後の指揮を勝利で終えた横浜ビー・コルセアーズ カイル・ミリングHC 【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


また、魅せるバスケットボールと「Go! B-COR!!」「ヨキヨキヨキ」「勝つ勝つ勝つ」のパフォーマンスでファンを楽しませることも忘れなかった。カイルHCは「シーズン最終戦を迎える選手たちには自信があったから技術的なことは関係なかった。今シーズンをほぼ完璧に終えられた。最高の形で終えられて本当に幸せ。クラブ、ファン・ブースターが頑張って闘った結果」と表情をほころばせた。

勝利後、森川正明と喜び合う横浜ビー・コルセアーズ カイル・ミリングHC 【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】

 

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1Q、森川の2Pシュートでビーコルが幸先よく先制。以降で両チームは一進一退となり、同点のまま最初のクォーターを終える。2QでビーコルはA東京の得点を15点に抑えることに成功。アウダ、カーターの得点などで22得点を入れて7点のリードを持って前半を終えた。

18得点11リバウンドでダブルダブルをマークした横浜ビー・コルセアーズ#4ロバート・カーター【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


3Qに入るとA東京の追い上げを受け、中盤5分でA東京が逆転。安藤の連続3Pシュートなどで流れがA東京に傾いた。ビーコルは集中力を切らさず追撃し、竹田を投入するなどして立て直しを図り、残り3分でカーターが決めた2Pシュートで同点に追いついた。以降でリードチェンジが繰り返されたが、ビーコル2点ビハインドの残り3秒でストックマン・ジュニアが外角2Pシュートを決めて同点に追いつき、最終クォーターに突入した。

横浜ビー・コルセアーズ#2ケドリック・ストックマン・ジュニア 8得点を挙げる活躍で勝利に貢献した【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


4Qは互いにロースコアになった。立ち上がりで5点差に離されたビーコルは6分でファウルトラブルのアウダを投入して勝負に出る。アウダはすぐさまレイアップを決め、5分にもバスケットカウントを決めて猛追。ディフェンスでも粘りながら接戦に持ち込んだ。残り3分、カーターのフリースローで2点差にするとディフェンスをゾーンプレスに変更。これが奏功し、森川のレイアップで同点に追いつく。直後に2点のリードを許したが、アウダのフリースロー1本で1点差にすると継続したゾーンプレスでこの差を守り、残り18秒でアウダがユーロステップからレイアップを決めて逆転。さらにアウダは18秒に得たフリースロー1本を決めて2点差とし、ビーコルがこの差を守って勝利を決めた。

チーム最多23得点を挙げた横浜ビー・コルセアーズ#1パトリック・アウダ【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


ビーコルの二桁勝利は3人。パトリック・アウダが23得点を挙げてチーム最多(5リバウンド・1アシスト・1スティール)。ロバート・カーターが3Pシュート3/9本で18得点。リバウンドも11本取ってダブルダブルをマーク(2アシスト)。レジナルド・ベクトンが11得点(8リバウンド)を挙げている。

【カイル・ミリングHC試合後会見コメント】

「前回のA東京戦の勝利から選手たちは自信を持っていた。その流れに乗り、ホーム最終節で新潟に2連勝。前節の試合でBリーグになってからの最多勝利数に並ぶことができ、この記録を超えることが全員のモチベーションになっていた。試合の立ち上がり、集中力を持ってプレーできていてパフォーマンスもとても良かった。ここまで頑張ってくれた選手を誇りに思っているし、今シーズンを良い形で終わることができてとても良かった。

チームにシーズン当初から伝えていたのは、シーズン中にアップダウンがあると思うが、落ち過ぎず、上がり過ぎずにプレーするということだった。私自身や外国籍選手の合流が遅れた中で、新しいシステムを選手自身が学ぶ必要があり、なかなかうまくいかない時間もあったが、チームに関わる全ての人たちの人間性がとても良く、チームとしてポジティブに活動していくことができたからこそ、ベストな状態でシーズンを終えることができたと思う。

クラブの歴史を塗り替えることができて嬉しく思っている。コーチの仕事の中で、周囲の人々を楽しませることはとても意味のあること。勝利すること、結果を求めないといけないことはもちろんだが、前節のホーム最終節で2連勝した時にファンの方々が喜んでいた姿を見て、なおさらそう思う。あの時もとてもうれしかった。ファンの方々に喜んでもらえることは、コーチとしてのやりがいになっていた」

横浜ビー・コルセアーズ カイル・ミリングHC 【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


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竹田 謙、そしてカイル・ミリングHCと闘ったビーコルの2020−21シーズンが終わった。これ以上にない最高の3連勝締めで竹田とカイルHCの有終を飾った。

今季のビーコルは、コロナ禍の中で思うようなスタートを切れなかった。シーズン終了後にチェコ代表チームに合流するパトリック・アウダは「十分な準備が出来ない中で開幕を迎えないといけなかった。そのため、シーズン中にカイルHCのスタイルを学び、スタイルを築き上げる必要があった」と当時を振り返る。「それでも全ての試合で、負け試合でさえも競り合うことができたし、強豪チームにも善戦した。諦めずに闘い続け、最後に私たちは強くなった」と胸を張る。

シーズン終盤でチームが見せていた善戦は、ビーコルの進化成長を如実に示していた。4月にA東京に初勝利し、続く東西2位の千葉と大阪には勝利こそできなかったものの相手を苦戦させての惜敗。そして、成績が拮抗する新潟とのホーム最終節で連勝し、ミリングビーコルの集大成と位置づけたシーズン最終戦でA東京からも勝利を奪ってみせ、見事な3連勝締めで波乱のシーズンを最高の形で終えた。

ビーコルとA東京は共にチャンピオンシップ進出がかかっていなかったが、ビーコルにとっては大きな目標があった。クラブが持つ最多勝利数記録を塗り替えることは、このチームにとってのシーズン終盤での大きな目標になっていたし、カイルHC、選手、コーチングスタッフが各々のプライドをかけて、この新記録達成へと邁進していた。

この差が終盤の接戦での勝敗を分けたと思う。カイルHCは試合前に「集中力が鍵」といっていたが、1Qの立ち上がりからチームの集中力は研ぎ澄まされていた。そして、選手たちにはみなぎる“自信”という武器があった。

ベンチで眼光鋭く戦況を見つめるカイル・ミリングHC【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


カイルHCが掲げる3つの哲学の中には『BUILD CONFIDENCE(自信をつける)』がある。コーチの合流前にこれを知った時、これこそBリーグになってから低迷を続けるビーコルに必要なことだと思った。

カイルHCは、練習前に選手ひとりひとりに声をかけ、時にはジョークを交えながらコミュニケーションを取っていた。練習中のコートにはコーチの「何やってんだ!」「いいぞ!いいぞ!」「さぁいこう!」と叫ぶ声がいつも鳴り響いていた。時には厳しく、時には褒める指導を繰り返して選手たちの力を伸ばした。そして、負け癖がついていたチームに地道に“自信”を植え付けていった。

「バスケットボールは80%が自信。選手たちには自信とメンタリティを1年掛けて植え付けてきた。例えば若いコウヤ(須藤昂矢)はシーズン当初にプレータイムが少ししかもらえず、悩む時期もあったが、自信を持ってプレーさせ続けた。モリさん(森川正明)は、前のチーム(三河)でプレータイムが伸びなかったが、ビーコルでは主力になったし、外国籍選手たちも同じ。選手みんなが互いに信じあって“自信”を伸ばしていった」とカイルHCは証言する。

ディフェンスについてはこう語っている。「このチームのディフェンスは最初から悪くはなく、伸びしろがあった。最初からあった良い部分をベースにして強化していった。選手たちは次第に自分たちのスタイルを信じるようになっていった。ベストなディフェンスはコート上の5人が共通の理解を持つ必要があるが、シーズンの最後にそれが出来るようになり、このチームのディフェンスは強固になった」

【写真提供©B-CORSAIRS/T.OOkame】


ファンに愛されたカイルHCは惜しまれながら来季フランスリーグに戻る。築き上げた強固なディフェンスと得た揺るぎない“自信”はコーチが残した置き土産であり、貴重な宝ものになった。来季、ビーコルがこれをどう活かしていくかが重要になってくる。
カイルHC、選手たち、コーチングスタッフたちはこのクラブの歴史を塗り替えた。2020−21シーズンのチームが残した成果は今後も語り継げられ、強いチームへと変貌するターニングポイントになるはずだし、受け継ぐ来季のチームはこれを昇華させなければならない。

選手、チームが大きく進化成長している中でのシーズン終了。カイルHCも後ろ髪を引かれる思いだ。「シーズンがまだ続いてくれたら…。本当に素晴らしい1年だった。沢山の喜びをいただいて、言い足りないほどの感謝がある。もし、望みが叶うならば、いつの日か戻ってきて、私が頂いたこの喜びを今度は皆さんの喜びにして返したい。ビーコルファンの皆さんが恋しくて寂しい」と惜別の言葉を残した。

常にファンを大切にし、選手たちを息子たちと思ってきたカイル・ミリング。情熱と陽気さをあわせ持ったチャーミングな闘将を決して忘れることはない。これを書いている筆者自身も多大の感謝があり、カイルHCを誇りに思う。いつの日か、このチームで再会出来ることを願いたい。


【記事/おおかめともき・写真提供/©B-CORSAIRS/T.OOkame・動画提供©B-CORSAIRS】

⬇竹田 謙 試合後インタビュー

⬇カイル・ミリングHC 試合後インタビュー


Written by geki_ookame