7年間ビーコルを支え続けた36歳のベテランは、まだまだ闘う!
8月31日、横浜ビー・コルセアーズは蒲谷正之の退団を発表。また同日、信州ブレイブウォリアーズは蒲谷との2018-19シーズンの選手契約基本合意を発表した。
8月最後の日に、実に寂しいニュースが飛び込んできた。7年間に渡ってチームを支え続けたミスター・ビーコル蒲谷正之がビーコルを去ることが発表された。蒲谷は信州ブレイブウォリアーズに移籍する道を選んだ。36歳の大ベテランはプレータイムを求めて、新たなる航海に出る。
横須賀市出身の蒲谷は、日本大学、三菱電機メルコ ドルフィンズ(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、富山グラウジーズを経て、三菱電機に復帰。以降ビーコル創設の2011-12シーズンから横浜ビー・コルセアーズに入団して中心選手としてプレー。ビーコルでの7年間では通算309試合に出場し、2813得点を挙げた。
2013年6月19日有明コロシアムで、ライジング福岡と雌雄を決した「bjリーグ 2012-2013シーズン プレイオフ ファイナルズ」の大一番で35得点というハイスコアを挙げてMVPの座に輝き、ビーコルの初優勝に大きく貢献。横浜中華街で優勝パレードもおこなった。
翌年チームが迎えた経営危機では、その存在と活躍で勇気を与え、ビーコルブースターと共に苦難の時代を支えた。蒲谷が“家族”と呼ぶビーコルブースターからは、ミスター・ビーコルとして親しみ愛され続けた。
Bリーグになった2016-17シーズンからは、世代交代の波に押されプレータイムが徐々に減っていき、得点もbjリーグ最終年の2015-16にマークした411得点から46得点に激減。これは怪我も影響したのだが、今季は傷も癒え闘える状態だったにもかかわらず28試合の出場に留まり、先発は開幕節を含めたわずか3回に終わったが、それでもここぞという場面でコートに立ち、前年を上回る93得点を挙げてみせた。
プレータイムが少なくなっても、与えられた時間の中でチームのために、愛するビーコルブースターのために死力を尽くして闘い続けたミスター・ビーコルの姿。その蒲谷が今季最も輝き「蒲谷正之、未だ健在」を大きく示したのが4月8日平塚でおこなわれたホーム西宮戦GAME2だった。
チームはGAME1で、細谷将司、田渡 凌、竹田 謙の3選手がインフルエンザで欠場するといった緊急事態が発生。特にB1残留に向けたサバイバルゲームの中でポイントガードを二人も失うといった危機的状況だった。
GAME1では、ベテラン山田謙治(現・広島)がポイントガードで先発して窮地を救ったが、蒲谷も途中から出場してキャプテンシーを発揮。チームの勝利に大きく貢献した。
そして翌日のGAME2で、蒲谷はさらなる躍動を魅せる。ショットが冴えに冴えてシュート成功率100%。今季自己最多となる15得点を挙げ、アシストも4つ記録した。「オレを忘れるな!」といわんばかりの体を張った気魄溢れるプレーでチームを引っ張り、ビーコルは連勝。山田と共にチームの危機を救った。
蒲谷は試合後の会見に登場。「お久しぶり!」と記者たちにおどけてみせたその表情にはベテラン選手が持つ「憂い」が見え隠れした。この時、B-COR MAGAZINEは蒲谷に、プレータイムが減少し、ベンチからゲームを見つめる時間が長くなっていることへの、もどかしさを聞いている。
「横浜ビー・コルセアーズの初年度からやって、設立当初からプレーしていますけど、良い思いも、最高の思いもあったし、最低の思いもしています。その中で、本当にビーコルは、自分のチームというか、自分の家のようなチームなので、本当にチームが勝ってくれれば、僕は嬉しいです」
「今の采配も、若手の育成も、僕がチーム全体の目線から見ても、それは横浜ビー・コルセアーズが今後強くなっていく上で大事なこと。みんながステップアップしていく上で、役割があった時や、求められた時に、しっかりと自分の仕事がこなせられるようにする。それだけは出来るように準備して努力しています」
神妙な口調でこう語った蒲谷の言葉にミスター・ビーコルの誇りを感じ、そのプライドに胸を強く打たれた。昨シーズン、チームがB1残留を決めたあと、チームが発表した2018-19シーズンの契約選手の中に蒲谷の名前はなかった。多くのビーコルブースターが愛してやまないミスター・ビーコルの進退を自分のことのように心配した。
蒲谷は苦渋の決断を自らにくだした。プレータイムを求めて愛するビーコルを離れる。あの西宮戦で示した通り、その力はまだまだ衰えてはいない。信州の地でもう一度、大輪の花を咲かせてみせる。
ミスター・ビーコル蒲谷正之。ビーコルの誇り高き、栄光の背番号#3は永遠に海賊の英雄として語り継げられる。蒲谷正之に多大な感謝の意を表すると共に、新天地・信州ブレイブウォリアーズでの活躍を心から願いたい。
【取材・写真・記事/おおかめともき】
横浜ビー・コルセアーズ 『蒲谷正之選手 退団のお知らせ』
https://b-corsairs.com/news/team_20180831-1/
信州ブレイブウォリアーズ 『選手契約基本合意(新規)のお知らせ』
https://www.b-warriors.net/news/45444/